民主主義のソーシャルデザイン‐ 公職選挙法の改正
いよいよ「平成」も残り数日となりました。来週から「令和」の時代が始まります。「令和」の時代とは、どのような時代になるのでしょうか。新たな「令和」の時代に、自分が住んでいる地域の「未来」を誰に託すのか、ということを決める平成最後の統一地方選挙が行われました。読者の皆さんが住んでいる「まち」でも選挙が行われていたかもしれません。
選挙期間中は、駅前など、人が集まる所では、拡声器を使い、候補者が自身の主張を訴え、街中で選挙カーが走り回り、候補者の名前があちらこちらから聞こえてくる、賑やかな日が続いたと思います。そんな喧噪も、過ぎ去ってしまえば、それまで騒がしかった分、少し寂しさに似た感情も湧くことがあるような無いような。
さて近年、公職選挙法の改正が続いています。2013年の参議院選挙は、インターネットを活用した選挙運動を解禁した初めての選挙、2016年の参議院選挙は、選挙権年齢が「18歳」に引き下げられた初めての選挙でした。今回の統一地方選挙では、候補者が選挙期間中に、「ビラ」を配布することができるようになりました。(国政選挙や知事選等の首長選挙では、すでに認められていました。)。このような公職選挙法の改正は、「公職選挙法の現代化」と言えるかもしれません。
法律が作られたのは、昭和25年。今から、約70年前のことです。公職選挙法の基本的な理念は、選挙の公正性と候補者間の平等性の確保にあります。その理念を理解するために、ひとつの喩えをしてみたいと思います。候補者間の平等性の確保とは、同じ選挙に、お金を持っている人とお金を持っていない人が、それぞれ立候補したとき、持っているお金の違いで、有利不利を生じさせないようにしよう、選挙活動で「できること」が異ならないようにしよう、ということです。
お金を持っている人は、大量のビラや看板を作ることができるかもしれませんが、お金を持っていない人は、ビラや看板を大量に作成することができないかもしれません。選挙活動とは、「自分に一票を入れてください」ということを訴える活動ですから、物量の違いは、当然、選挙結果に大きく影響する可能性があります。
そのため、公職選挙法の規定では、選挙期間中に「できないこと」が多く、選挙とは、「知恵比べ」の様相を帯びています。そこで活躍するのが「選挙プランナー」であり、「選挙デザイナー」です。(こうした仕事の話は、また後日)
70年前には「できなかった」ことが、現代では、技術進歩の結果、お金をかけることなく、様々なことが「できる」ようになりました。それならば、法律の基本的な理念を守りながら、「できること」の範囲を広げようという流れにより、近年の公職選挙法の改正につながってきている、すなわち、法律の現代化がなされてきていると言えるのです。今後は、「電子投票」、すなわち、自宅でインターネットを通じて投票する、ということなどもできるようになるかもしれません。
(執筆:矢尾板俊平)