日々是総合政策No.292

スウェーデンの地方税(3)-税の偏在

 地方税原則(地方税が満たすべき基準)の一つに「税の偏在度の少なさ」があげられます。住民一人当りの税が特定地域に偏在すると地方支出の受益格差が生じます。税が極端に少ない地域では、必要不可欠な行政サービスさえ受益できないでしょう。
 表は、スウェーデンの地方勤労所得税(以下、地方税と略記)と他の税の偏在度-一人当り税のコミューン間格差の程度-を示します。コミュ-ン(以下、市と略記)の総数は290です。

表 一人当り税の変動係数 (2021年)

(注記)最大/最小は290の市における一人当り税の最大値÷最小値。
(出所) 注1に基づき筆者算出。

 変動係数は標準偏差÷平均でこれが大きいほど、税(一人当り。以下同じ)の地域間格差が大きいことを示します。
 均一地方税は各市の税率を同一と想定した税制です。市の税率差異が税の格差に与える効果を除くためです。税率が同一なので、この税の変動係数は課税所得のそれに一致します。地方税は、市によって税率の異なる現行税制を指します。
 表から、地方税の税率差異は均一地方税の格差を緩和しています。一人当り課税所得の高い市ほど低い税率を採用するからでしょう。
 国の所得税(勤労所得税)と資産所得税は国税ですが、国への納税分を納税者の居住地(市)にふり分けました。
 国の所得税の税率はゼロと20%の二段階で、20%は52.3万クローナ(約732万円)を超える勤労所得に課されます(注2より)。税の負担者が高所得層だけなので、この層の多い市が税を多く得ます。二つの地方税は低所得層を含む全所得階層が負担し、しかも、同一市内では比例税率です。
 資産所得税は利子・配当・キャピタルゲインに税率30%を課します。富裕層がキャピタルゲインを多く得るため、富裕者の多い市ほど税が多くなります。二つの地方税は資産所得に課税しません。

  1. Statistiska Centralbyrån, SCB(2024)
    https://www.statistikdatabasen.scb.se/pxweb/sv/ssd/
  2. Skatteverket, SKV (2024)
    https://www.skatteverket.se/privat/skatter/beloppochprocent/2020.4.7eada0316ed67d728238ec.html?q=Belopp+och+procent-inkomst%C3%A5r+2020

ともに2024年2月10日参照。

(執筆:馬場 義久)