日々是総合政策 No.3

問題解決を目指すデータ分析を行うために

 人間行動や社会に関する様々な問題を理解し、それらの解決を目指すためのデータ分析は極めて強力なツールとなり得ます。ここで「なり得る」という限定的な表現をしたのは、残念ながらそうではないデータ分析も世の中に多く存在しているからです。データ分析の真贋を見抜く能力を身につけ、様々な問題の解決を図ることを通じて、より良い社会を実現するためには何が必要でしょうか?
 問題の解決に資するデータ分析には、統計学の概念や方法論だけではなく、目的に応じたデータの取得、分析の組み合わせ、さらには結果の解釈・公表といった一連のデータ分析の戦略とそこでの透明性・再現性の確保が重要となります。このようなデータ分析のための「リテラシー」は、学問というよりもプロフェッショナル・スキルです。企業や政府機関などの多くの組織が、データ分析から得られた科学的証拠に基づいて意思決定を行うようになってきました。EBPM(Evidence-based Policymaking: 証拠に基づく政策立案)が内閣府主導で推進されているのも、その一例です。
 ここで気をつけなくてはいけないのは、スキルである以上、実際の経験を通じてのみ「問題解決に資するデータ分析」を身につけることができるということです。話を聞いたり、本を読んだりするだけでは身につきません。まずオープンソースの統計プログラミング環境(例えばR)を入手し、手頃なデータセットの分析から初めてみるのがスキル獲得への最初の一歩となります。それを繰り返すうちに、データ分析のコツや勘所も身につけられるのです。
 また、問題の解決に資するデータ分析の実践には理系・文系の垣根を超えた学際的アプローチが必要です。統計学の知識や英語でのコミュニケーション能力はいうまでもなく、人間行動や社会を取り巻く様々な背景の理解と、機械学習やスクレイピング手法を状況に応じて有効活用できるプログラミング能力も大切となります。ひょっとすると高校生から大学入試に向けて理系・文系のどちらかに絞って勉強することは、問題解決を志向するデータ分析のためのリテラシー獲得にとっては遠回りかもしれません。

(執筆:後藤大策)