クラウドファンディングの役割
耳慣れない金融用語が、新聞、雑誌に次々に登場しています。クラウドファンディングもそのひとつでしょうが、「日々是総合政策No.9」で取りあげたコミュニティビジネスと深くかかわってきます。クラウドファンディングとは、不特定多数の人々が、インターネットを通じてお金を融通する手法のことです。
顔なじみの人々が集う場を基盤とするコミュニティビジネスは、お互いの情報を得やすいだけでなく、アイデアを出し合って技術革新を行う機会に恵まれています。それゆえ、
財やサービスをより安く生み出し、地域発のグローバル化を実現する可能性さえ持っています。しかし、生産を継続、拡大するためにはコストがかかります。通常、まず、自分のお金(自己資金)で賄いますが、それで不足する場合、銀行から借り入れるか、債券や株式を発行する必要が生じます。ところが、コミュニティビジネスはそれほど信用があるわけではなく、証券の発行は銀行借入に比べ、一層、難しいのが実情です。
そこで、「地域経済活性化支援機構」のような政府主導の官民ファンドが設立されました。また、地方自治体も「ミニ公募債(住民参加型市場公募地方債)」を発行しています。他方、民間サイドでも、住民(市民)を主役とするコミュニティファンドが設立されるようになっています。これには、信用金庫、農業協同組合などの協同組織金融機関やNPO・NPOバンクが仲介する間接金融型のものと、運営会社が設定した目的に賛同して、市民が出資、投資する直接金融型のものがあります。
さらに、市民主役のお金の流れを加速すると思われるのが、クラウドファンディングです。その理由は、共感を覚えて参加する市民ひとりひとりとコミュニティビジネスを、直接、結び付けることができるからです。加えて、IT(情報技術)の活用によって、コストを低めることができるからです。しかし、クラウドファンディングを促進するためには、詐欺的な行為を許さないように規制を強化しながら、運営業者の参入をしやすくする政策が望まれることになります。
(執筆:岸真清)