中国の株式型クラウドファンディング
中国においても、地域経済の活性化が重要な課題になっています。地域経済の推進者は
中小企業、ベンチャービジネス、農業など地域を基盤とするコミュニティビジネスです。しかし、これらのビジネスに共通する悩みは、資金調達が難しいことです。それだけに、クラウドファンディングに期待が掛かることになりそうです。
実際、2010年代に入って、世界のクラウドファンディングは急成長を遂げています。特に伸長が目覚ましいアジアの牽引者は中国です。クラウドファンディングにはいろいろな型がありますが、米国では寄付型が目立っていたのと対照的に、中国では株式型クラウドファンディング(未公開株と引き換えに投資するタイプ)が主軸になっています。
その違いは、両国の地域金融システムの形成過程が異なっているためです。米国の地域金融は民間商業銀行やNP0などの民間部門を政府が補助するシステムであったのに対して、中国は国有大企業が国有商業銀行から優先的に資金を得られたのに比べ、中小企業など小規模事業の資金調達は不利な立場に置かれていました。それを補ってきたのが主にインフォーマル金融(「講」や「頼母子講」のような未公認の民間金融)でした。浙江省温州市における事業の発展がその代表例ですが、インフォーマル金融が中小企業の資金調達に重要な役割を果たすことから、政府が黙認ないし活用してきました。
このインフォーマル金融を代替しようとしているのが、クラウドファンディングです。特に2014年に政府が承認した株式型クラウドファンディングが、インターネットを通じて小口投資と中小企業の資金調達を活性化しつつあります。政府も国有商業銀行を主柱とするフォーマル金融と伝統的なインフォーマル金融の双方の改革を進めるため、株式型クラウドファンディングを支援しています。
しかし、真に小口投資家、市民の参加を促し、地域活性化を実現するためには、詐欺など不正な行為を防ぐ絶え間のない対策が必要になります。
(執筆:岸 真清)