民主主義のソーシャルデザイン:権力の源泉
今週(11月20日)に、安倍晋三首相の「通算」の在職日数が2887日となり、これまで憲政史上最長の通算在職日数であった桂太郎氏を抜きました。「通算」の在職日数なので、2006年9月から2007年9月までの第1次安倍政権の在職日数も含めた日数ですが、「憲政史上最長」という記録は、安倍政権の大きなレガシー(遺産)となり得ると言えます。ちなみに、「連続」の在職日数では、安倍首相の大叔父である佐藤栄作氏が持つ2798日が最長で、安倍首相が、この記録を塗り替えるのは、来年の8月24日、東京パラリンピック開会式(8月25日)の前日になります。
ここで「安倍首相は、なぜ、これだけの長期政権を維持することができているのか」という疑問を検証することは、統治論としても、次代の政治家、後世の政治家にとっても、非常に有意義な示唆を提供することになるでしょう。
その評価は分かれるところですが、結論から言えば、権力の行使を通じて、永田町と霞が関の両方をうまくガバナンスしてきた、ということに尽きるのではないでしょうか。
選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に移行する中で、永田町における権力の大きな源泉となったものとして、党の「公認権」が挙げられます。もちろん、無所属でも、小選挙区で当選することができる強い候補者もいます。しかし、多くの候補者は、党からの公認を得られず、その支援も無く、さらに言えば、党の公認候補が対抗馬として擁立されてしまえば、小選挙区で当選することは難しくなります。党の「公認」を得るためには、党の方針に逆らうことができません。これにより、「党高閥低」を生み出し、派閥の力を弱めることにつながりました。
一方、権力の源泉としては、「公認権」は、首相が持つ実質的な「解散権」とセットになることが必要不可欠です。それをセットで初めて使ったのが、小泉純一郎元首相の下での「郵政解散」であったと言えます。
「いつ解散するかわからない」。安倍首相が憲法改正を政権のレガシーとするのであれば、来年のオリンピック・パラリンピックを待たずに、衆議院を解散し、総選挙に打って出る可能性はゼロではありません。
(執筆:矢尾板俊平)