家事労働を考える(3)-国際比較
今回は、日本の家事労働時間・市場労働時間の国際的に見た特徴を紹介します。下の表は、15歳から64歳の男女について、有償労働時間と無償労働時間を比較したものです。有償労働は市場労働(仕事)を中心として通勤・通学などを含み、無償労働は日常の家事・買い物・世帯員及び非世帯員のケア・ボランティアなどからなります。ケアを含む家事労働と考えてよいでしょう。
時間は、本コラムNo.248 と同じく一週間の曜日ごとの平均の和(月曜の平均+・・・+日曜の平均)を7で割った、週全体平均の一日あたり時間です。
表 生活時間の国際比較2020年 週全体平均 一日当り(分)
以下の点が注目されます。
第一に、男女とも日本の総労働時間(有償労働+無償労働)が一番長いことです。日本の男女は、きわめて忙しい日々を過ごしています。
第二に、日本の女性の有償労働時間がスウェーデンの女性並みとなっています。スウェーデンは女性の労働参加率の高い国として有名です。同国は1960年代から1980年代末まで、女性の地方公務員を増やす政策を採り続けました(以下、注2より)。その間、民間の雇用数は男女とも増加していません。このような思いきった政策をとったスウェーデンと日本が、有償労働時間の点で並んだわけです。ただ、同国が女性公務員に対して、60年代からの主にパートタイマーを雇う方式から、80年代にはパートタイマーを一定数確保しつつ、フルタイマーを増やす政策に転じたことにも留意すべきです。
第三に、日本の男性の有償労働時間が突出して長く、逆に、無償労働の短さが目につきます。他国に比べ、男性の労働時間の配分が有償労働に片寄っているわけです。
第四に、無償労働の男女分担比を求めると、日本女性は男性の5.5倍、米国は1.7倍、英国は1.8倍、ドイツは1.6倍、フランスは1.7倍、スウェーデンは1.3倍となり、この点でも日本は最高です。
以上、日本の男女の有償労働時間が長いことをふまえると、労働生産性の上昇が家事労働の男女間配分の改善にとっても重要な課題でしょう。
注
1.内閣府男女共同参画局URL
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/column/clm_01.html 図表1[CSV形式:2KB]より。
2.Rosen,Sherwin[1997] ”Public Employment,Taxes and the Welfare State in Sweden”in The Welfare State in Transition,by(eds.) R.B.Freeman,R.Topel and B.Swendenborg, The University of Chicago Press,pp.84-85.
(執筆:馬場義久)