ウクライナ問題(2)
2022年2月25日の国連安全保障理事会において、「ロシアによるウクライナ攻撃の即時停止とロシア全軍の撤退」を求める決議案が、ロシアの拒否権発動により採択されなかった。
理事会構成国15か国のうち、11か国が賛成し、中国、インド、UAE(アラブ首長国連邦)は棄権した。2014年3月の安保理決議案と同じく、常任理事国のロシアの反対が安保理否決を決定した。
再び安保理では否決されたものの、2022年3月2日の国連総会では、96か国共同提案の「ロシアによるウクライナへの攻撃停止」を求める決議案が採択された。ただし、法的拘束力はない。この決議案は、「ウクライナの主権、独立と領土保全」を再確認するもので、「国際的に承認された境界内でのウクライナの領土から」ロシアが「その軍事力すべてを即時、完全、無条件に撤退する」ことを求める。
193加盟国のうち141か国が賛成。反対は、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5か国。中国、インド、ベトナム、モンゴル、パキスタン、南アフリカ、南スーダン(これらの国は前回も棄権)など35か国が棄権し、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベネズエラなど12か国が無投票だった。
安保理で棄権したUAEは賛成に回った。2014年3月の採決で反対した11か国のうち、6か国が棄権し、1か国(ベネズエラ)が無投票だった。2014年に棄権したエリトリアは、2022年には反対に回った(注)。
ここで注意すべきは、以下の点である。
アフリカの小国エリトリアはなぜ反対したのか(前回は棄権)
中国、インド、ベトナム、モンゴル、パキスタン、南アフリカ、南スーダンなどの国々が毎回棄権し、ロシア非難に賛成しないのはなぜか
特に、インドが2014年の国連総会、2022年の国連安保理(インドは非常任理事国)と国連総会と立て続けに棄権したのはなぜか
反対・棄権・無投票を選択した国々に共通点はあるか
反対・棄権・無投票は、意識的または意図的に賛成しなかったことを意味する。特に、棄権は「中立」を意味するよりも、実質的な反対を意味すると考えてよいか
これらの問題に全部答えることは私の能力を超えているが、若干について考えてみたい。
(注)決議内容と投票結果は、以下の国連ニュースに基づく。
https://news.un.org/en/story/2022/02/1112802(安保理決議内容)
https://digitallibrary.un.org/record/3959039(国連総会投票結果)
・URLへのアクセスはすべて2022年3月20日
(執筆:谷口洋志)