政策問答(1)
総合的に政策を考えるために、次のような政策課題に関する問いかけに対して、皆さんにはご自身で回答してみていただきたいと思います(注)。
(1) いま最も重要な政策課題は何か
(2) その政策課題を抱える社会はどのような社会か
(3) その政策課題に関係する主体は誰か
(4) その政策課題を引起こす諸要因は何か
(5) その政策課題を放置するとどうなるのか
(6) その政策課題をどのようなデータで把握するのか
(7) その政策課題と諸要因を関連づけるモデルや理論は何か
(8) 比較するときの価値判断基準は何か
(9) その政策課題を解決するための最善の政策手段は何か
(10) その政策課題を解決するために社会が犠牲にしなければならないものは何か
(11) その政策課題と最も密接に関連する政策課題は何か
(12) 誰がその政策課題を解決すべきなのか
(13) あなたは、その政策課題の解決について何ができるのか
ここでいう政策課題とは、社会問題と言い換えてもいいでしょう。政策とは「より良い社会をめざす人間の営み」で、社会とは「制度化された様式の中で、相互に関係し合い共同に活動している人間の集団」と解するならば、政策課題は「より良い社会をめざす人間の営み」に係る課題で、社会が抱える問題となります。
これから、(1)から(13)までの問いかけに関して順番に、皆さんが回答するときに役立つようなヒントを示していきます。まず、(1) いま最も重要な政策課題は何かについて、皆さんは何か一つ具体的な社会問題を挙げてみてください。「いま」の時点が現在だとすると、なぜ、その社会問題が現時点で最も重要だと考えたのでしょうか。例えば、地球温暖化問題や子どもの貧困問題や新型コロナウイルス感染症拡大による諸問題などの社会問題を挙げた人もいるでしょう。そうした社会問題は、皆さんが実際にご自分で直面し実感した問題なのでしょうか、あるいはソーシャルメディアを含めたマスメディアが取り上げた問題なのでしょうか。マスメディアが取り上げた社会問題だとしても、マスメディアが取り上げる多数の社会問題の中から、なぜ皆さんは一つの特定の社会問題を最も重要な社会問題として、回答したのでしょうか。
こうしたことを根本から考えることが、総合的に政策を考える総合政策学の醍醐味なのです。
(注)本稿はじめ次回以降の政策問答シリーズのエッセイは、横山彰(2001)「地方財政の政策課題を考える」『地方財政』40(3):4-8、横山彰(2009)「総合政策の新たな地平」中央大学総合政策学部編『新たな「政策と文化の融合」:総合政策の挑戦』中央大学出版部:1-14など筆者の著作に依拠しています。
(執筆:横山彰)