スウェーデンの地方税(11)-歳入の十分性④
今回は、2008年-2021年における「歳入の十分性」の 市間分布の推移を示す。
図は、290市の一人当り地方支出(以下、支出)、一人当り税(以下、税)、支出に占める税の割合(以下、税の支出比)の変動係数(大きいほど市間格差が大きい)の推移を示す。なお、県の支出も県に属する各市の支出と捉え、それを県人口一人当り県支出(=県支出総額×市人口÷県人口÷市人口)と想定します。21県ではなく290市を分析単位としているからです。
図 支出・税・税の支出比の変動係数(2008-2021年)
(出所)注1に基き筆者作成。
支出の変動係数が一番小さい。これは、医療・介護・教育等の「福祉サービス」へのアクセスは、居住地に関わらず等しく保障すべきという政策の反映でしょう(注2より)。
税の変動係数は支出を上回る。Eda市の税(2021年の最小値)は、55234クローナ(税率0.337×課税勤労所得163900)で、最大値のDanderyd市の税130807(0.308×424700)の42.2%です。しかし、Edaの課税勤労所得はDanderydの38.6%であり、税格差の原因は課税勤労所得の格差にある。
税の支出比の変動係数が一番大きい。税にかなりの格差があるもとで、支出が均等に提供されるからでしょう。
表 税の支出比の市間分布
(出所)注1に基づき筆者作成。
表は税の支出比別に見た市の数を示す。その変動係数が最小の2009年と最大の2021年との比較です。
第一に、100%以上は1(Danderyd)から2(同市とLidingö)に増加しました。後者の100%以上は2020-21年のみですが、Danderydは2008-21年の毎年100%以上です(注1より)。Birdの要請(本コラムNo.300を参照)を持続的に充足しています。
第二に、50%以上70%未満の市が212と214で、ともに全市290の約73%です。
第三に、40%以上50%未満が14から39へ激増しました。
地方分権国家としては第二点が意義深いと思います。皆さんの印象は如何ですか?
注
- SCB URL
www.statistikdatabasen.scb.se/pxweb/sv/ssd/
2024年9月13日参照。 - Tingvall,L(2007), Local government financial equalisation in Sweden,pp.2-3, Finance ministry.
(執筆:馬場 義久)