日本の税と可処分所得(7)-個人住民税(続)
勤め先収入の増加額に占める住民税の増加額の割合について、本コラムNo.314を補充します。勤め先収入(以下、収入)と住民税(以下、税)の増加額とは、2023年の値-2003年の値です。
表 収入の増加額に占める税の増加額の割合

(注記)1.収入(勤め先収入)増・住民税増は月額。
2.増加率は増加額÷2003年の値。
3.B/Aは、勤め先収入の増加額に占める住民税の増加額の割合(%)。
(出所) 注に基づき筆者算出。
表は、収入の増加額(A)と税の増加額(B)を、十の収入階層別に示します。B/Aは、収入増加額に占める税の増加額の割合(%)です。
収入の増加率は収入の増加額÷2003年の収入で、税の増加率は税の増加額÷2003年の税です。
各階層における収入の増加率は、基本的に労使交渉によって決定されます。
他方、税の増加率は住民税政策の影響を受けます。表によれば、その増加率は収入階層に関してほぼ逆進的です。これは、5%から始まる超過累進税率構造を10%の均一税率に改めた結果です(本コラムNo.314を参照)。
税増加額(以下、ΔT)が収入増加額(以下、ΔY)に占める割合B/Aは、
ΔT=税増加率×2003年の税
ΔY=収入増加率×2003年の収入
より、
B/A=ΔT/ΔY=(税増加率÷収入増加率)×(2003年の税÷同年の収入)
となり、二つの増加率の相対比と2003年の税負担率によって決まります。
以下、収入の第1階層・第2階層と第10階層のB/Aを比較します。第1階層の税増加率は第10階層の5.26倍(1.7885÷0.3399)、第2階層は4.14倍です。この点は、第1・第2階層のB/Aを第10階層より引き上げます。また、第1階層の収入増加率は第10階層の0.406倍で、第2階層は0.259倍(0.0503÷0.1939)です。この点も、両階層のB/Aを第10階層より高くします。最後に、2003年の税負担率は、第1が、0.795%、第2が1%、第10階層が4.23%なので(注より算出)、第10階層のB/Aを両階層より引き上げます。
結局、第1・第2階層が、高い税増加率と低い収入増加率に直面したため、そのB/Aが第10階層より高くなりました。政策的には税増加率の逆進性が重要です。
注
家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 2003年・2023年より。
最終アクセス 2025年10月9日。
(執筆 馬場 義久)