日々是総合政策No.123

都区財政調整制度は必要なのか

 都区制度には、都区財政調整制度という仕組みがあります。都区財政制度は特別区間での財政格差を是正する仕組みです。特別区地域の税収の一部を都税として東京都に集め、これを23の特別区に割り振っています。大阪都構想が実現すれば、同様の仕組みが導入されます。今回は、この是非について考えてみたいと思います。
 都道府県や市町村といった地方公共団体の財政格差を是正する仕組みに地方交付税交付金制度があります。政策のために必要な金額(基準財政需要額)から通常時の税収(基準財政収入額)を引いた額を地方公共団体ごとに算出し、中央政府が国税として集めた税収を財源にして各地方公共団体に補填します。各地方公共団体と中央政府との間で行っているこのやりとりを、23の特別区と東京都と間で行っているのが都区財政調整制度です。都税には道府県税と市町村税の両方がありますが、固定資産税など他の市町村では市町村税であるものが都税として東京都に預けられ、これが特別区にそれらの格差を是正するようにして再分配されます。
 少し話が変わりますが、47都道府県と言います。同じ広域自治体であるのになぜ名前が違うのでしょうか。市町村の名前の違いの方は人口に対応していそうです。こちらは、なぜ四つも名前があるのでしょうか。明治政府は倒した幕府の領地の内、重要な地を「府」に、その他の地を「県」としました。さらに、廃藩置県によって諸大名が治めていた藩を廃止し、国土はすべて府県のどれかになりました。北海道の領域にも三県が置かれていましたが、三つもあるのは非効率ということになり、古くからある地名で一つに統一し北海道になりました。東京は首都ということもありますが、東京市と東京府を廃止し、府が市を吸収合併してできたことから東京都となりました。
 東京市にあった区が現在の23の特別区につながっています。都区財政調整制度は、この旧市内での格差をなくすための仕組みです。この制度を持つ杉並区と持たない三鷹市が同じ東京都の中に合って隣り合っている、というのは何かしっくりいかない気がします。2000年の地方自治法の改正によって、東京都の特別区は市町村と対等の基礎自治体となりました。都区財政調整制度はこの対等性を壊しているように思えます。

(執筆:奥井克美)

日々是総合政策No.122

世界にはびこる不正義を許せるか(2):被害者と被害の権利と存在が無視される日本

 18世紀初頭に,イギリスの小説家ダニエル・デフォーは、「ロビンソン・クルーソー」の物語を発表し、クルーソーが無人島に漂流してから自力の生活を経て28年後に帰国するまでを描いた
 その生活が希少な資源を有効に利用し最大限の効用(満足)を得ようとしたかのように読めることから、経済学者は好んでロビンソン・クルーソーの世界を語ってきた。何とかその日暮らしをしてしのいでいるうちに、いろいろなことを考えて生き延びる知恵を身に着けるという点に経済学者は着目するのだが、不思議なことに、クルーソーの生活における孤独でみじめさな面には経済学者は関心がない。
 ところで、デフォーが書いた小説としてほかに『モル・フランダーズ』(岩波文庫)がある。この作品は、波瀾万丈の女性を描いた小説であり、英国女流作家V・ウルフも絶賛した傑作である。この女性は若い時期に不幸な恋愛を経験してから虚栄の結婚生活を送るようになり、中年になってからは窃盗犯として数々の犯罪を実行する。絶対に捕まらない常習犯と噂されたモルだが、最後には捕まり、米国への流刑罪となる。
 物語中には、モルがどのように窃盗を行ったかについて詳細な描写がある。デフォーは、この小説は犯罪を奨励するものでなく、一般人がこれを読んで犯罪防止に努めてほしいという教訓を込めて書いたのだと弁明している。数え切れない窃盗で得た財産を元手に、老後のモルは豊かな生活を送り、宗教心に目覚めていくという結末は、モルの人生の前半よりも後半の意義を説いたものと考えると、デフォーの主張も理解できないわけではない。しかし、被害者が被った苦痛や損害がどれだけ大きいかは、デフォーとモルの関心事ではない。
 この小説を現代の日本人が読んだら、多くの人が面白いと思うことだろう。最後は宗教心に目覚めるという結末に共感を覚える日本人も多いに違いない。しかし、私はそうは思わない。主人公のモルの描き方こそ、今日の日本の病理を表している。つまり、加害者の言い訳ばかりが強調され、被害者の存在や金銭的・物理的・精神的・心理的な被害には無関心だという「病理」だ。

(執筆 谷口洋志)

*本文の後半は、筆者の「あまのじゃくの経済学」『改革者』から一部引用しています。

日々是総合政策No.121

再分配政策(1):最悪の事態に対する備えとしての社会保障制度

 今日の西側先進諸国は社会保障制度を基盤とした福祉国家で、こうした国々では再分配政策の施行が国の重要な役割になっています。再分配政策の背後には、政策決定過程における個々人の再分配政策への政策需要があります(横山, 2018)。
 再分配政策には、個人間・地域間・世代間の経済的格差を是正するための政策だけでなく、最低限の生活保障・賃金保障・医療保障・教育保障などを提供する政策などもあります。皆さんも良く知っている日本国憲法第25条第1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」の規定は、国民に最低限の生活保障をすることを国の責務としています。この規定は、ロールズの正義論(Rawls, 1971)からも正当化することができます。社会におけるすべての個人が、今も将来も自分の置かれるポジションないし境遇については全く判らず無知である一方で自分自身の選択に影響を及ぼす一般的事実についてはすべて知っている「無知のヴェール」のもとに置かれている状況を、ロールズは想定します。
 こうした仮説的な「無知のヴェール」に包まれたもとでは、社会の基本構造や基本ルール(憲法規定)を選択する立憲的選択の段階(立憲段階)において個々人が危険を回避する行動を取るならば、すべての個人は、立憲後に生起する最悪の事態(例えば不慮の事故で稼得能力を喪失し助けてくれる家族や隣人もなく生計を維持できない事態)に自分が陥った場合を考えて最低限の生活保障や所得保障を備えた社会保障制度を用意しておくことに、立憲段階で合意するはずです。これが、マクシミン原則ともいわれるもので、社会の基本構造や基本ルールを選択するときには、選択肢となる基本構造や基本ルールの各々で生起する最悪の事態を比較して、その中で最善の(最もましな)基本構造や基本ルールを選択することが望ましいとする考え方です。
 したがって、立憲後の政府の再分配政策に対する個人の立憲的な政策需要は、自分も陥る可能性がある最悪の事態を想定した危険回避的な個人が自己利益を追求することで説明することができます。これが、再分配政策に対する立憲的な政策需要です。

参考文献
横山彰(2018)「再分配政策の基礎の再考察」『格差と経済政策』(飯島大邦編)、23-45頁、中央大学出版部。
Rawls, J. (1971), A Theory of Justice, Cambridge, Mass.: Harvard University Press. 矢島鈞次監訳『正義論』紀伊國屋書店、1979年。

(執筆:横山彰)

日々是総合政策No.120

累進所得税と低所得者支援(2)

 前回No.109では低所得者支援には所得控除より税額控除の方が適していると述べました。今回は税額控除のうち、勤労所得税額控除(EITC:Earning Income Tax Credit)の狙いについて解説します。EITCは、勤労を条件として勤労所得の低い個人あるいは家計を支援する税制です。
 いま、Aさんは生活保護手当Gを受給し労働時間L=0とします。その効用Uを,
 U=U(G,0)
 と表します。次に、Aさんが働いて生活保護制度から出る場合の効用ULを、
 UL=U{Y(1-t)-α, L}
 とします。Yは勤労所得、t(0<t<1)は勤労所得税の平均税率を指します。αは社会保険料や医療費の自己負担などを指します。当面、α=0としましょう。
 どちらの効用もそれを決める第1要素は可処分所得で、これが増加すると効用は増えます。第2要素はLで、これが増加すると余暇時間が減少するため効用は減ります。
 さて、EITCの狙いの一つは、Aさんが勤労して経済的に自立するよう促すことです。それには、UL>U となる必要があります。Lに関するかぎりU>ULなので、第1要素についてY(1-t)>Gが成立しなければなりません。そこでEITCはtを引下げて可処分所得を増やし、労働参加へのインセンティヴを与えます。たとえば、低勤労所得者に限り
 EITC=sY   
 と設定します。ここでsは0<s<1 で税額控除率です。このときT=tY-sY となり、平均税率がt-sに下がり、Y-T=(1-t+s)Yと可処分所得が増加します。
しかもEITC導入国の多くは、tがゼロとなるような低勤労所得者をEITCの中心対象としています。実際にはαが多額だからです。彼らにとってはT=-sYとなるので、政府は勤労所得に課税せず補助金のみを給付するわけです。
 EITCは通常低勤労所得のみに適用されるので、所得再分配機能を果たします。重要なことは、その再分配と労働参加率の拡大を両立させようとしている点です。なお、再分配機能について特に重視されているのは、子供のいる家計への支援です。米国や英国のEITCは子供の数の多い家計ほど給付額が多額になるようデザインされています。

(執筆 馬場 義久)

日々是総合政策No.119

大阪都構想は望ましいのか

 大阪都構想は大阪市を廃止し4つの特別区にするというもので、東京の都区制度を目指す面を持っています。しかし、栗原 (2012)は、都区制度が地方自治の失敗であるといいます。今回は、この観点からの大阪都構想反対論をみていきます。
 日本の地方自治制度は、基礎自治体である市町村と広域自治体である都道府県の二層制をとっています。しかし、大都市に関しては、これとは別に二つの特別の制度が存在しています。一つは政令指定都市制度で、もう一つが都区制度です。政令指定都市制度は、市に大きな権限を与え、広域自治体が持っているそれを一部担わせます。一方、都区制度は、広域自治体に大きな権限を与えるもので、東京都だけがこれを採用しています。東京都は府県の権限に加えて、基礎自治体としての権限も持っています。東京都は23区の存在しない地域では広域自治体としての性格を持ち、23区が存在する地域では基礎自治体としての性格を持っているのです。
 大阪都構想は、政令指定都市制度から都区制度への変更ととらえることができます。しかし、栗原 (2012) は、これを区から市へという戦後目指された「東京都区制度改革」と逆行するものである、と批判します。東京都ができたのは戦時下の1943年で、首都防衛の意味もありました。東京市と東京府が廃止となり、従来の東京府の区域に東京市と東京府を合体させた新しい団体である東京都が誕生しました。1974年に地方自治法が改正され区長公選制が再導入され、特別区の自治権の拡充がなされました。さらに2000年の地方自治法の改正によって、東京都の特別区は基礎自治体となりました。戦時下でできた統制色の強い制度を、住民の意向を反映させるそれへと制度変更してきました。
 栗原 (2012) はしかし、これではまだ足りない。東京都に残っている基礎自治体の権限をすべて特別区にうつし、都区財政調整制度も廃止すべきである、といいます。東京の特別区である23区は、市を目指す方向で改革を進めていくべきにもかかわらず、大阪都構想はこれと逆行する動きで後退である、というのです。考えなければならない論点であると思います。

(注)栗原 (2012)は、栗原利美著・米倉克良編 (2012)『東京都区制度の歴史と課題:都区制度問題の考え方』公人の友社, です。
 同じ主張は、川上哲 (2019)「東京都区制度の現状と課題から何を汲み取るか:大阪都構想による住民自治の後退」『住民と自治』2019年12月号, pp. 24-27, にもみられます。

(執筆:奥井克美)

日々是総合政策No.118

年金ボランティア

 中国四国農政局長に着任早々、山陽新聞からコラム欄「一日一題」を毎週2か月間執筆を頼まれたので、農業政策などではなく日常の思いをエッセイ風に書くことにした。数回執筆して調子が乗って来たので、年金問題の持論を展開した。市町村が認定するボランティア活動に年間○○日以上参加した場合に年金を全額支給するが、給与を貰って常勤で働いている人やゴルフ三昧の人などで働きたくない人には年金を減額支給とする。もちろん、介護認定を受けている人や老々介護する人や通院・入院で参加できない人などの事情があれば例外とする。
 ボランティア活動は市町村が認めれば何でもよい。新たに仲間を集めてやってもよいし、すでにやっていることでもよい。民政委員や消防団員活動、公園や街路の清掃、街の防犯見回り、学童教育・通学支援、高齢者福祉の手伝い、駅前の自転車の片付け、海外や国内の貧困者支援、身障者施設への慰問・外出支援・料理の配達、公共施設の維持修繕、棚田の農作業手伝い、災害支援、難民支援など。何も思いつかない人のため、市町村による活動紹介や市町村主導の活動参加も用意する。
作家の塩野七生さんが言うように、我々は欧米人のようにエデンの園の「禁断の実」を食べた罰として働いているわけでない。老後の日向ぼっこは似合わない。介護が必要となるまで社会的に働き、美しく安全な街・村づくりなどに貢献する。ボランティア活動参加で孤独死もなくなり、個人の抱える悩みも社会として支援できる。自由への束縛という反論もあるかも知れないが、政策は日本社会の特質を前提にするべきだ。それに年金財政の状況を考えれば、高齢者は金銭負担でなく労働で社会的コストを軽減する。言わば、「大化の改新」の税制の租庸調にある労働で支払う庸である。
 若い女性秘書に原稿を見せたら、「反発が来ますよ」と忠告されたので、原稿の最後に「ほんの思いつき」と付け加えた。彼女は正しかった。掲載された次の日に局長室に「余裕のあるお前だからそんな事が言えるのだ」といった電話が入った。次週のコラムに、「読者の方から高齢者への配慮が足りないとお叱りを受けた。お詫びしたい。」と書く羽目になった。こうして、わが「大化の改新」は歴史から葬られた。

(執筆:元杉昭男)

日々是総合政策No.117

民主主義のソーシャルデザイン:米国大統領選挙2020

 2020年になりました。東京オリンピック・パラリンピックがいよいよ開催されますが、オリンピックイヤーにおいて、世界中が注目する大イベントがもう一つあります。それが米国大統領選挙です。
 米国の大統領選挙は、共和党・民主党の両党で「大統領候補」と「副大統領候補」を指名する予備選から始まります。各党の「大統領候補」になった候補者が、11月の第1火曜日が選挙日となる本選挙を争います。前回(2016年)の大統領選挙では、共和党が指名したトランプ氏と民主党が指名したヒラリー・クリントン氏の間で争われました。前々回(2012年)の大統領選挙は、民主党は当時の現職大統領であるオバマ氏、共和党はロムニー氏でした。
 今回、民主党の大統領候補指名レースでは、前副大統領のジョー・バイデン氏、上院議員のエリザベス・ウォーレン氏、同じく上院議員のバーニー・サンダース氏、インディアナ州前サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏、実業家のアンドリュー・ヤン氏などが名乗りを上げ、そこに前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏も参戦し、混沌のレースの様相ですました。バイデン氏、ウォーレン氏、ウォーレン氏、ブルームバーグ氏は70歳を超えており、ブティジェッジ氏とヤン氏はそれぞれ30代、40代と「若さ」が「売り」になります。一方、ブティジェッジ氏とヤン氏には国政の経験はありません。
 2月初旬にアイオワ州で行われる党員集会から、3月のスーパーチューズデー、そして7月(民主党)、8月(共和党)の党大会を経て、11月3日の大統領選挙へと、候補者にとっては長距離マラソンが始まります。その中で、「失言」や「スキャンダル」等で大統領として適格ではないと有権者に判断されれば、否が応でもレースから撤退せざるを得ません。つまり、「民主主義のリーダー」に育てていくプロセスでもあると言えます。
 オバマ氏もトランプ氏も選挙前は「本命」候補ではありませんでした。この1年で、どのようなリーダーが舞台に登場するのか、楽しみです。

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.116

人口減少のインパクト(7):合計特殊出生率(2)

 前回のコラムでは,出生の指標である合計特殊出生率について解説を行いました。合計特殊出生率の本来の定義からすると,「ある年に産まれた女性が,出産可能年齢の間に平均何人の子供を産んだのか」というコーホート合計特殊出生率を用いるべきなのですが,対象となる集団が49歳を越えないといけないという問題が生じます。
 そこで,コーホート合計特殊出生率に代わる合計特殊出生率として用いられているのが「期間合計特殊出生率」です。私たちがニュースなどで目(耳)にする「今年の出生率は…」といった数値は,期間合計特殊出生率です。厚生労働省による説明では,以下のようになります。
 「ある期間(1年間)の出生状況に着目したもので,その年における各年齢(15~49歳)の女性の出生率を合計したもの。女性人口の年齢構成の違いを除いた「その年の合計特殊出生率」であり,年次比較,国際比較、地域比較に用いられている」
 2018年段階における,期間合計特殊出生率は以下の表になります。

表1 期間合計特殊出生率(2018年)

 ちなみに,1974年の期間合計特殊出生率は以下の表になります。

表2 期間合計特殊出生率(1974年)

 1974年と2018年の期間合計特殊出生率を比較すると,1974年では20代の年齢別合計得出生率が高いことがわかります。一方で,30代以降の年齢別合計特殊出生率は2018年の方が高くなっており,晩産化の傾向にあることがわかります。

(執筆:中澤克佳)

日々是総合政策No.115

産業構造4

 こんにちは、ふたたび池上です。第7−9回は、経済発展に伴い経済の中心が農業から工業にシフトするルイス・モデルとハリス=トダロ・モデルのお話でした。今回は、ハリス=トダロ・モデルの続きで、個人が農業(農村)から都市に移動するかしないかという意思決定のお話です。
 前回の復習ですが、農業、都市インフォーマル部門、都市フォーマル部門の3部門の所得の大きさですが、大きい順から、都市フォーマル部門、農業、都市インフォーマル部門の所得とします。さらにすべての労働者は同質と仮定します。このとき、個人が農業に残れば農業における所得を確実に獲得できます。一方、都市に移動すると、インフォーマル部門に就業して低い所得を獲得できるか、フォーマル部門に就業して高い所得を獲得できるかは、事前にはわからず、運で決まります。期待できる所得の大きさを所得の期待値、期待所得と呼び、その大きさはフォーマル部門とインフォーマル部門それぞれの雇用量の大きさに依存します。
 前回の復習ですが、都市フォーマル部門の社長は、現在の労働者の所得・栄養状態・健康・福利厚生を高めに設定・維持し、離職を防ぐ、やる気を高める、生産性を高めるなどの理由から、賃金を下げてより多くの労働者を雇うことはしません。この仮定から、農業から都市に人々が移動しても、フォーマル部門に雇われる確率は変わらず、インフォーマル部門に雇われる確率だけが増え、都市の期待所得は減少します。農業の所得と都市の期待取得が同じになると、人々は農業に残っても、都市に移動しても同じなので、移動しなくなります。このモデルの結果は、途上国の都市部の貧しい人達の生活水準は、農村の生活水準よりも低そうなのに、彼らが農村に戻らず都市部に残る理由の一つを説明しています。
 次回は、このモデルの続きで、どの部門で投資が進むと人々の生活水準が向上するかというお話の予定です。

(執筆:池上宗信)

研究プロジェクト「多文化共生社会の総合政策研究」第2回 公開研究会のお知らせ (1月25日開催)

総務省に「多文化共生の推進に関する研究会」が2005年6月に設置されてから、公共・地域の取り組みは14年以上が経過しました。2018年12月には外国人労働者受け入れのための新たな在留資格「特定技能」が創設され、あわせて「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定されるなど、日本における多文化共生をめぐる状況は大きな変化の中にあります。

本研究プロジェクトでは日本の多文化共生の現状や課題を考えるべく、下記の通り公開研究会を行います。皆様のご参加をお持ちいたします。

日時:2020年1月25日(土) 13:00~15:00

場所:中央大学多摩キャンパス 11号館4階 11410教室

プログラム

 13:00~13:05 開会挨拶

   横山彰(中央大学名誉教授、総合政策フォーラム代表理事)

 13:05~13:55 報告1 「日本における外国人の就業行動」

   小﨑敏男(東海大学政治経済学部教授、総合政策フォーラム客員研究員)

 13:55~14:05 休憩

 14:05~14:55 報告2 「日韓の考え方の比較:ストックの日本vs.フローの韓国」

   鞠重鎬(クック ジュンホ)(横浜市立大学国際商学部教授、総合政策フォーラム客員研究員)

 参加費:無料

 参加申込こちらのフォームからお申込みください。(先着40名)

 申込締切:2020年1月20日(月) PM17:00

 問い合わせ:上記申込フォームの自由記述欄にてお願いいたします。*返信までお時間をいただく場合がございます。予めご了承ください。