高等教育無償化と地方私大の公営化(上)
2018年の文部科学省「高等教育の将来構想に関する参考資料」と同省「平成30年度学校基本調査(確定値)の公表について」によれば、18歳人口は、ピーク時1992年の205万人から減り続け2018年には118万人になり、さらに2030年には103万人になると予測されている。その中で、逆に大学(学部)進学率は1989年度の24.8%から2018年度には53.3%にもなり、大学・短大・高専を合わせた高等教育機関進学率も2018年度には81.5%にも達し、いずれも過去最高となった。大学数は、1989年度の499校から2018年度には782校にまで増加している。大学の定員増が大学進学率の上昇をもたらしているのは間違いない。しかし、このような高等教育の発展も、今後18歳人口がさらに減少していく見通しの中で、手放しでは喜べない厳しい現実に既に直面している。
日本の高等教育費の負担は、公的負担依存型の北欧諸国等と違って、家計依存型となっている。そのため、財務省の資料「所得階層別の高等教育進学率」によると、所得格差が大学や高等教育機関の進学率格差となって表れている。そこで政府は、2017年に「新しい経済政策パッケージについて」で、全世代型社会保障改革の一環として高等教育の無償化・負担軽減政策を打ち出し、10%への消費税引上げを財源に2020年4月からそれを実施する予定である。
2019年5月10日成立の高等教育無償化法によると、その内容は、大学、短大、高専、専門学校の学生に対し、授業料・入学金の減免と返済不要の給付型奨学金支給を行うものである。住民税非課税世帯及び世帯年収380万円未満の低所得世帯の学生が対象となる。教育の機会均等の点から評価できる施策であるが、懸念される事柄もある。大和総研レポート(2019年4月5日)も指摘しているように、高等教育無償化措置により、大都市圏への学生の集中と地方の学生流出超過の加速化が起こるのではないかという点である。
(執筆:片桐正俊)