日々是総合政策No.140

コロナ後の世界 (1)パンドラの箱に残されたもの

 この瞬間において、医療の現場で医療活動に当たられている全ての医療関係者の皆様に、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 ギリシャ神話の「パンドラの箱」のお話を聞いたことがあると思います。
 ある日、パンドラは好奇心を抑えきれず、全知全能の神ゼウスがパンドラに持たせた箱の蓋を、ついに開けてしまいます。すると、その箱からは、あらゆる災いが地上に飛び出していきます。しかし、その箱にはひとつだけ残ったものがありました。それは「希望」だったのです。
 私たち人類は、これまでに多くの感染症による危機に直面してきました。ペストは歴史上、何度も世界的な流行(パンデミック)が発生しています。「ハーメルンの笛吹き男」の伝承には、いくつかの仮説がありますが、その仮説のひとつに、ペストに関わる仮説があると聞いたことがあります。確かに、ハーメルンの町に現れた笛吹き男が退治したのはネズミでした。
 20世紀、第一次世界大戦中の1918年から1919年には「スペインかぜ」のパンデミックが発生しました。インフルエンザでは、「アジアかぜ」、「香港かぜ」、そして約10年前に「新型インフルエンザ」のパンデミックも発生しています。
 そして、いま私たち人類は新たな感染症のパンデミックに直面しています。新型コロナウイルス(COVID-19)です。欧米では、「医療体制崩壊」が現実となり、「ロックダウン(都市封鎖)」の措置が執られています。わが国においても、4月7日に、政府が「緊急事態宣言」を発出し、16日には、対象地域を全国に拡大させました。
 各都道府県においても、「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく「緊急事態措置」による外出自粛の要請、休業要請等が実施され、社会的・経済的な活動が大きく制限されています。この数週間でも、リモートワークやオンライン授業の導入をはじめ、私たちのライフスタイルは変わりつつあります。コロナ後の世界では、人々の価値観も大きく変容するかもしれません。
 いま、私たちが語るべきことは、コロナ後の「希望」かもしれません。少しの間、パンドラの箱に残ったその「希望」について語ってみようと思います。

(執筆:矢尾板俊平)

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