大阪はどう変わるのか(上)
2019年3月大阪府の松井一郎知事と大阪市の吉村洋文市長がともに辞職して、松井氏が大阪市長選に、吉村氏が大阪府知事選に立候補することを表明し、両者ともに4月、当選を果たしました。地域政党「大阪維新の会」に所属する両名が、知事と市長の立場を入れ替えて選挙にのぞんだのは、党の最重要政策としてきた大阪都構想を実現させるためです。
2017年4月に大阪維新の会と公明党が任期中に大阪都の賛否を問う住民投票を行うことを合意する文書をかわしていた(任期中とはいつまでなのかについては諸説ある)ものの、公明党からの協力が得られず、これが実現できないと松井・吉村氏らが2019年3月判断し、住民の信を問うため、出直し選挙に踏み切ったのです。
しかし、松井氏の知事任期は2019年11月まで、吉村氏の市長任期は2019年12月までで、そのままの立場で選挙に立候補すれば、当選したとしても、それらの期間までしか任期がなく、構想実現のためには時間が短過ぎます。4年の時間を確保するために、立場を入れ替えてのクロス選挙となったのです。
大阪都構想の目的は大阪市と大阪府の二重行政を解消することです。大阪市のワールドトレードセンタービルディング(WTC:現在の大阪府咲洲庁舎)と大阪府のりんくうゲートタワービルは、その高さを競って建設されました(後者の方が0.1m高い)が、どちらも巨額の損失が生じました。両高層ビルの建設は、市と府が似た事業を行う二重行政の典型例とされます。どちらか一つが事業を行う仕組みになっていれば、損失は少なくてすんだでしょう。
高度成長の頃ならいざ知らず、少子高齢化が進み税収が上がりにくくなっている中、このような無駄を許しておく余裕はもはやありません。水道事業は、規模の経済が働く費用逓減産業として経済学の教科書に紹介されています。しかし大阪では、市内向けの水道を大阪市が管理し、大阪府が大阪市を除いた府内の市町村向けの水道を供給しています。これらを統合し一元管理に移行するのが合理的に思われます。ところが、水道料金が値上がりになる地域が出るなどの理由によって政治的な軋轢が生じ、実現できていません。
(執筆:奥井克美)