日々是総合政策 No.11

多文化共生を考えよう(上)

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会、ラグビーワールドカップ2019日本大会の開催を前に、多文化共生に取り組むことの重要性の認識が広がっている。総務省の「多文化共生の推進に関する研究会報告書2018」によれば、日本における在留外国人数は2018年6月末時点で約264万人と過去最高となっており、総人口に占める割合も過去最高を記録している。また、2019年4月には、新たに外国人材の受入れのための在留資格(「特定技能1号」「特定技能2号」)の創設等を内容とする法改正が施行された。これも考えると、今後の人口減少社会の地域社会において、外国人のプレゼンスが、今まで以上に増大し、これに伴って多文化共生政策が、ますます重要な課題となっていくことも、間違いないだろう。
 地域社会に外国人が増えることについて、治安その他の面で不安感をもつ地域住民がいることは否定できない。四方を海に囲まれている日本だから強調される面があるにせよ、イギリスのブレグジット論議も、そのきっかけの一つが移民問題であったことやアメリカの大統領選挙やEU各国の選挙をみても、在留外国人問題は、世界共通の課題である。そのことを認識した上で、筆者は今後の地域活性化の「鍵」は、「多文化共生にある」と考えて取り組んでいくことが重要と考えている。かねてから、いずれ「多文化共生が、我が国の公共政策上の大きな課題になる」と考えていたが、その原点は、今から四半世紀以上前の、1990年代前半のアメリカ西海岸の生活体験である。当時、多文化共生という言葉はなかったが、多様な民族、言語、文化、国籍の存在を多とするアメリカ社会に驚愕したことが思い出される。印象的だったのは、多文化共生をやっかいなものと考えるのではなく、むしろ積極的にとらえていることだった。多様な文化に触れられることは喜びであり、多様な文化があることは社会の強さにつながる、という強い意思を感じた。

(執筆:平嶋彰英)

多文化共生を考えよう(下)