日々是総合政策 No.17

高等教育無償化と地方私大の公営化(下)

 文部科学省「平成30年度学校基本調査(確定値)の公表について」をみると、学部・大学院を含む大学の学生数は2018年度約291万人で、そのうち私大の学生は約214万人(約74%)である。大学数は782校でうち私大は603校(約77%)である。量的には圧倒的に私大が日本の高等教育(大学教育)を支えている。ところが、旺文社教育情報センター「地方私立大の“公立化”!」によると、2016年度には私大全体577校中257校(44.5%)が定員割れを起こしている。入学定員800人未満の小規模私大は私大全体の72%にもなる。今後18歳人口が減少していく中で、定員800人未満の小規模地方私大を中心に、約300大学の経営が成り立たなくなるという「エコノミスト」(2018年7月24日号)の指摘もある。
 前回にも述べたように(⇒No.13を参照)、高等教育無償化措置によって学生の地方から大都市圏への進学移動が生じた場合に、地方の小規模私大の経営は間違いなく成り立たなくなる。その先取り支援策として注目されるのが、地方自治体による私大の公立化で、これまでに全国で10私大が公立化された。日本私立大学連盟は、「高等教育政策に対する私大連の見解」や「高等教育に対する公財政支援の現状と課題―私立大学を中心に―」等において、高等教育の無償化は国・私立大学間の授業料・奨学金格差を固定化さらに拡大しかねないとし、国に対して経常費補助金の拡充や国・私立大学間格差是正等を要請しているが、1000兆円を超す債務を抱えている国に多くを期待しても実現しそうにない。
 となると私大の公立化もやむを得ないように思えるが、ただそれも上述の旺文社資料によれば、財源の相当額が地方交付税で措置されているので結局は国の負担となる。いずれにせよ、国・公・私立大学に対する国の財政負担や家計の負担の在り方を根本的に問い直すことと大学の統廃合が避けられない時代を迎えていることは間違いない。

(執筆:片桐正俊)

高等教育無償化と地方私大の公営化(上)