日々是総合政策No.179

企業のリスクマネジメント

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、全世界は大変なダメージを受けています。このような現況を昨年度中に想像できた人はどのくらいいるでしょうか?
上場企業は、有価証券報告書のなかで、「事業等のリスク」について記述する義務があります。市場のリスクや信用上のリスク、経営管理上のリスクやその他企業を取り巻くリスクなど、想定しうるあらゆるリスクについて記載しなければなりません。
 2018年4月から2019年3月の間に決算を迎えた日本の上場企業の有価証券報告書の中で、「パンデミック」、「感染症」、「伝染病」、「新型インフルエンザ」をリスクとして記載した企業は、727社(eolにより筆者検索)であり、20%程度にとどまります。21世紀に入ってからだけでも、SARS(2003年)、新型インフルエンザA型(H1N1、2009年)、MERS(2012年)、エボラ出血熱(2014年)など、パンデミックと呼ばれる伝染病の感染爆発が世界的に発生しました。しかし、自社のリスクとしてこれを認識していた日本の上場企業は、2019年3月までの1年間では5分の1しかなかったことになります。この数値が2019年4月1日から2020年3月までの1年間では、80%以上に跳ね上がります。さらにリスク項目としては記載していないまでも、有価証券報告書のどこかにこれらの用語の記載のない企業はありませんでした。どの企業も何らかの影響を受けていることになります。各企業がどのようにこの危機に対処したかは、今後の有価証券報告書の記載から明らかになるでしょう。
 近年のリスクは、「事業戦略およびビジネス目標の達成に影響を与える不確実性(注1)」と定義されています。リスクマネジメントとは、想定されるリスクを事前に管理し、リスクの発生による損失をできるだけ回避することです。そのためには、まず、リスクを発見し、認識しなければなりません。今回のコロナ禍の経験を、何らかの発展に繋げ、社会をよりよくしていく経験値としていくために、企業、そして私たち個々人がしていくべきリスクマネジメントについて考え続けていく必要があります。

(執筆:渡部美紀子)

注1 米国COSO(The Committee of Sponsoring Organization of the Treadway Commission: トレッドウェイ委員会支援組織委員会)からERM(Enterprise Risk Management)フレームワークの改訂版が公表(2017.9.6)されており、その中で明示されている。