日々是総合政策No.194

結婚と離婚、そして緊急事態宣言(下)

 結婚をするカップルもいれば離婚するカップルもいる。2020年4月に出された緊急事態宣言は、離婚の決定にも影響している。婚姻届出の状況と同じように、図には緊急事態宣言が出された2020年4月以降の6か月間の離婚届出件数が、前年の同期間(2019年4月~9月)に比べてどのくらい変化したかが示されている。あわせて、緊急事態宣言の影響を相対的に見るために、緊急事態宣言が出されていない2019年10月から2020年3月までの離婚の届出件数の変化率を前年同期(2018年10月~2019年3月)と比べて示している。
 これをみると、緊急事態宣言が出される前の離婚の届出件数は、前年同期に比べて、特定警戒都道府県で1.7%減、それ以外の地域で2.7%減と微減だったことがわかる。特定警戒都道府県の方が1%ポイント程度であるが減少幅は小さい。この数字は、緊急事態宣言が出されたのち、特定警戒都道府県で16%減、それ以外の地域で11.8%減となった。今度は、特定警戒都道府県において減少幅が4.2%ポイント大きくなっている。

図2.離婚届出件数の変化率(%)
出所:厚生労働省『人口動態統計(人口動態調査(速報・月次))』

 ここでみた結婚と離婚の届出件数の変化については、差の差分析を用いるなどの考察を経たわけではない。しかし、緊急事態宣言は人生の大事な決定、あるいは、そのタイミングに影響を与えたように見えるし、政府によって特定警戒都道府県に指定された地域に住むカップルの方が、それ以外の地域のカップルに比べてより影響を受けたように思える。離婚に比べて結婚に関する決定の方が政策の影響を受けやすいともいえそうだ。感染症を防ぐ目的をもった国の政策が、結婚や離婚といった、人生の大事な選択にまで影響を及ぼしているわけだ。思わぬルートで政策は人々の人生に影響を与える。それだけ政策の立案は難しい。
 緊急事態宣言が出された4月以降の6か月間で届出のあった婚姻数はおよそ25万。離婚の届出件数は約10万。未曽有の状況下のカップルが一生懸命に考えて下したそれぞれの選択が、二人にとって最良の選択となることを願う。

(執筆:小川光)