日々是総合政策No.196

自然災害とその復興課題について(2)

 日本の水道インフラは老朽化しており、とても脆弱です。厚生労働省による「新水道ビジョン推進のための地域懇談会(第10回)」でも全ての管路を更新するのに約130年かかると言う見解を示しています(注1)。人口減少化社会と節水器の普及で料金収入に基づくハードな更新事業が難しくなってきました。発災時には、多くの水道事業体が他の水道事業体や外郭団体・OBと協定を結ぶことでマンパワーを確保しながら、広域的な災害復旧を行っています。平常時の防災訓練や危機管理も含めて、大規模地震や台風の被害が最小限に抑えるような政策を試みています。
 もっとも、早期の災害復旧には様々な課題を抱えているのも事実です。派遣される応援部隊や資機材の搬入に時間を要するだけでなく、水道管路の布設状況が共有できていないこと、あるいは様々な連携不足から早期の災害復旧が滞るケースもあります。「災害時における受援体制に関するガイドライン(仮称)の素案について」では担当者の移動、連絡先の変更に対応できない等を理由に相互応援協定の締結だけでなく、共同訓練を通じた実効性の高い応援体制を確保するよう呼びかけています(注2)。
 また、災害後の早期復旧については具体的な応急復旧目標も設定しなければなりません。発災から何日後までに応急給水を達成させ、何週間後までに応急復旧が可能であるのかを想定しておくことも必要となります。水源の確保状況や給水手段により異なるものの、水道が唯一の給水手段である場合、水道事業の応急復旧目標は2週間から4週間が望ましいと言う見解を熊谷[2016]は示しています(注3)。ただ現実的には、日本水道協会編『水道統計(平成29年度)』に基づくと、多くの水道事業体が応急復旧目標を設定していません。人手不足を考慮しながら、水道事業体はいかに応急復旧目標を設定するのかも重要となるでしょう。

(注1)厚生労働省「新水道ビジョン推進のための地域懇談会(第10回)」、下記のURL(最終アクセス2020年9月23日)を参照。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/newvision/chiikikondan/10/suishin_kondan_10-1.pdf
(注2)「災害時における受援体制に関するガイドライン(仮称)の素案について」53頁、下記のURL(最終アクセス2020年9月23日)を参照。
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/tiho_juen/dai4kai/pdf/shiryo02.pdf
(注3)熊谷和哉[2016]『水道事業の現在位置と将来』水道産業新聞社、221-223頁。

(執筆:田代昌孝)