大阪はどう変わるのか(下)
前回(No.49)述べたような大阪市と大阪府の二重行政を解消するために、大阪市を廃止し、東京23区のような特別区をつくる、というのが大阪都構想です。ご存知のように東京都は23の特別区と市町村からなっています。特別区と市町村は基礎自治体として同じような仕事をしますが、特別区は市町村より予算について都との調整が必要となるなどの制約を受けます。大阪都構想には、政令指定都市として強大になった大阪市を抑え、大阪府(あるいは大阪都)の管理下に置くという側面があります。二重行政の解消の仕方としては、強大な大阪市を大阪府から独立させる特別市構想もありますが、これは本格的な動きになりませんでした。大阪都構想は、北村亘『政令指定都市』(中公新書, 2013年, pp. 213-215)に指摘があるよう、大阪市を解体してつくった特別区を大阪府が垂直統合する府主導の地方自治改革なのです。特別区の区長を選挙で選び住民自治を強化するという側面も大阪都構想は持っていますが、集権体制を強化する、地方分権が通常意味するのとは逆の面を持つ改革であることは、おさえておく必要があると思います。
大阪都構想の選択については、現在進められている形とは少し違いますが、大阪市民による住民投票が2015年5月に行われています。当時大阪都構想推進の中心であったのは大阪維新の会代表で大阪市長の橋下徹氏でした。橋下氏を含め大阪維新の会所属の政治家は選挙で連戦連勝を重ねていましたので大阪都は実現するかに思われましたが、住民投票の結果は僅差の否決でした。大阪市がなくなることに対する市民の抵抗感が大きかったのかもしれません。この結果を受け、橋下氏は政治家を引退することになりました。しかし、大阪維新の会は勢力を保ち続け、前回述べた松井・吉村両氏の当選によって、再挑戦の下地が整うことになったのです。2019年4月の選挙結果などを受け、公明党も大阪都構想に理解を示すようになり、再び住民投票を2020年に実現させる動きが加速しています。大阪がどう変わるのか、注視したいと思います。
(執筆:奥井克美)