人口減少時代の中で起きている都心への人口集中
平成27年国勢調査の人口等基本集計結果によると、2010年から2015年の5年間に人口が増加したのは8都県で、残り39道府県では人口が減少している。この5年間で日本の人口は96万2千人減少(2010年から0.8%減)しているので、人口が増加しているということは、転居による社会増が大きく影響している。人口増加が最も多いのは東京都で、35万6千人(2010年から2.7%増)の増加、そのうち23区は32万7千人の増加で、東京都の人口増加はそのほとんどが都心部分である23区内で発生している。
東京都への人口集中の内容について、2010年から2015年の5年間のうちに住所が変わった者の割合で見てみると全国計に比べて東京都は15%ほど高く、23区だけで見ると20%ほど高い。これで分かるのが、人口減少が続く地方は、定住率が高く、人口の流動性が低いことである。生活の豊かさを求めて転居が出来る人口の流動性の高さが社会の豊かさを示す時代になっているのではないだろうか。
社会の未来が見えない中、自己責任を求められた市民は、自らの生活を守るという観点から居住地を選択した結果、東京への人口集中は続く一方で、地方の急速な人口減少を引き起こしている。今、世界で問題となっている「分断社会」の問題は、発展により社会が広域化するなかで、その流れの速さについて行けない人々が多数発生していることを表している。流れについて行けない人々は、急激な変化を嫌う安定志向を強め、自己中心的な発想が様々な軋轢を生み、社会における相互作用の糸が切れ始め、社会の活力の低下に繋がっている。
人口減少時代という、社会における新たな局面を迎えた日本においては、地方の急速な衰退が予測され、社会は地方と都会が分断されていって、これまでのような全体の繁栄が社会の隅々まで行き渡ることは難しくなる。将来像をしかり描いて、持続可能な社会をいかに造っていくのかという舵取りが出来る社会、ガバナンスが機能する社会を、いかに構築していくのかが政治の責任として問われているのである。
(執筆:金子邦博)