特別定額給付金(上)
新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、特別定額給付金などを含む令和2年度補正予算が2020年4月30日に成立しました。特別定額給付金は、4月20日の閣議決定で、「医療現場をはじめとして全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ちを持ち、人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならない。このため、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うこととし、一律に、一人当たり10万円の給付を行う」(注1)と示されたもので、その給付対象者は基準日(2020年4月27日)において住民基本台帳に記載されている者(日本国籍を有しない者も含む)、受給権者はその者の属する世帯の世帯主となっています(注2)。
この特別定額給付金は、4月7日閣議決定の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における減収世帯への30万円給付(注3)を変更したものです。減収世帯への30万円給付は給付対象を困窮している世帯に限定した家計への支援対策であるのに対し、そうした限定をしない家計への支援対策が特別定額給付金です。この違いは、選別主義的な政策か普遍主義的な政策かの違いになります。
現行の児童手当制度では、原則的に扶養親族等の数に応じた所得制限がありますが、所得制限限度額以上の場合にも特例給付として児童1人につき月額5千円が支給されます(注4)。これは、選別主義を基にしながらも普遍主義も併せ持った政策になっています。新型コロナウイルス感染症緊急経済対策としての家計への支援対策は、特別定額給付金の普遍主義的な政策を基にしながらも、感染症発生の影響で真に困窮している世帯に給付対象を限定した追加的給付の選別主義的な政策を抱き合わせることが求められるかもしれません。ただし、減収世帯への30万円給付において減収世帯の線引き基準が大きな問題となったように、選別主義的な政策では明確で合理的な線引き基準を設けることが肝要になります。
(注1)内閣府「「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の変更について(令和2年4月20日閣議決定)」 23頁より引用。
(注2)総務省「特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連) 」 を参照。
(注3)内閣府「「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」について(令和2年4月7日閣議決定)」 23頁を参照。
(注4)内閣府「児童手当制度のご案内」 を参照。この現行制度に加え、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、児童手当(本則給付)を受給する世帯への臨時特別給付金(児童手当1万円上乗せ)もなされています(注1を参照)。
なお、注記でリンクを貼ったURLの最終アクセスは、すべて2020年5月4日です。
(執筆:横山彰)