ふるさと納税泉佐野市訴訟最高裁判決について(上)
ふるさと納税に関し、平成27年度税制改正における「ふるさと納税制度の特例控除額の倍増」と「ワンストップ特例」の導入で、返礼品競争が過熱したとも言われます。当時、筆者は総務省の自治税務局長、つまり、この制度の事務方の責任者でした(注1)。
ふるさと納税の対象を総務大臣指定団体に限る制度改正とこれに基づく総務大臣の指定告示によって、ふるさと納税制度から除外された泉佐野市が国を訴えた訴訟で、最高裁が6月30日に泉佐野市の全面勝訴の判決を下した(注2) 。
この最高裁判決に関して、コメントを申し上げれば、国会提出前の制度検討時に法制的な面から十分検討し、このような最高裁判決をいただくような訴訟や事態を招かないように、十分検討し制度を作らなければならないもので、結果としてこのような判決をいただいたことは残念で、早い段階で返礼品競争に対処できなかったことに原因があり、そのことには責任があり後悔が残ります。
判決については、いくつかのメディアから取材を受け、最高裁判決を読み直していると、段々と 時折引用される、判決における林景一裁判官の「補足意見」に、一体何が言いたい何のための補足意見なのだろう、その意図は何だろうという違和感を感じるので、コメントしておきたい。
林裁判官「補足意見」では、「私は、法廷意見に同調するものであるが、本件の経緯に鑑み,上告人の勝訴となる結論にいささか居心地の悪さを覚えたところがあり、その考え方を以下のとおり補足しておきたい。」と書く。今は居心地の悪さを逆にこちらが、感じてしまう。
一方で、あまり引用されていないが、林裁判官の外、宮崎裕子裁判長自身も補足意見を付している。こちらは、「私は、法廷意見に賛成するものであるが、その理由を、本件の背景にあるいくつかの問題を俯瞰しつつ補足しておきたい。」として、「ふるさと納税」が税なのか寄附金なのかという本質的問題に言及し、「もし地方団体が受け取るものが税なのであれば、地方団体がその対価やお礼を納税者に渡す(返礼品を提供する)などということは、税の概念に反しており、それを適法とする根拠が法律に定められていない限り、税の執行機関の行為としては違法のそしりを免れない」とも述べていた。
以下、(下)へ続く。
(注1)筆者のふるさと納税制度に関するコメントは、No.101 を参照されたい。
(注2)判決全文は、https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/537/089537_hanrei.pdf <最終アクセス2020.8.22>を参照されたい。
(執筆:平嶋彰英)