スウェーデンのコロナ禍対策(6)
スウェーデンのコロナ禍による死亡者について新しいデータ(注1)が公表されましたので、今回はそれを紹介します。このデータは9月28日までの死亡者5826名についてのものです。なお、10月6日現在の死亡者は5892名(注2)です。同データは死亡者について年齢、コロナ以外の疾患、居住地、居住住宅、死亡場所などを明らかにしています。下の表1はその一部を筆者が抽出したものです。
まず総数全体を男女別に見ると男性が女性を上回っています。次に年齢別では、5211名(総数の89.4%)が70歳以上で、2899名(49.4%)が85歳以上です。死亡者の大部分は高齢者です。
しかし、年齢別を男女別に見ると85歳以上では女性の方が多くなっています。表1では示していませんが、5歳刻みの年齢で男女間を比較すると84歳以下までは男性が多く、85歳以上から女性が多くなっています。ちなみに2019年のスウェーデンの男性の平均寿命は80.75歳、女性のそれは84.24歳です(注3)
次の疾患の欄は感染時におけるコロナ以外の疾患数を示します。死亡者の58%が二つ以上の疾患を抱えていました。主な疾患は心臓病・高血圧・糖尿病・肺疾患です。一番多いのは高血圧です。
表1 死亡者の構成(人、%)
さらに死亡者の住居構成を見たのが居住の欄です。ホームヘルプ欄は自分自身の住宅で、ホームヘルプ(訪問介護・看護)を利用している高齢者を指します。
特別住宅は、ホームヘルプ以上の介護サービスを必要とする高齢者の為の施設で、その入居対象は身体疾患等を抱え24時間ケアが必要な高齢者です(注4)。なお、注5によれば、2019年の特別住宅の入居高齢者は87000人です。
つまり、全死亡者の46.2%が特別住宅という介護施設の入居者でした。表2がその死亡者の内訳を示します。「ストックフォルム」とはストックフォルム県にある特別住宅の死亡者を表します。同県は全スウェーデンの21県のうちの最大人口県で、日本での東京都に該当します。
表2 特別住宅居住の死亡者(人)
注5によれば2019年の特別住宅の20%は民営であり、2007年の15%より民営が増加しています。このような民営化傾向も踏まえて、高福祉国家の高齢者介護サービスの中心的施設で、なぜ多くの犠牲者が出たのか、その原因解明が求められます。
注
1.スウェーデン社会庁URL
https://www.socialstyrelsen.se/statistik-och-data/statistik/statistik-om-covid-19/statistik-over-antal-avlidna-i-covid-19/
2.スウェーデン公衆衛生庁URL
https://fohm.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/68d4537bf2714e63b646c37f152f1392
3.スウェーデン国家中央統計局URL
https://www.scb.se/en/finding-statistics/statistics-by-subject-area/population/population-composition/population-statistics/pong/tables-and-graphs/yearly-statistics–the-whole-country/life-expectancy/
4.石橋未来[2016]「スウェーデンの介護政策と高齢者住宅」『大和総研調査季報』
Vol.21,154-169頁。
5.Socialstyrelsen[2020] Statistics on Elderly and Persons with Impairments – Management Form 2019.
URL いずれも最終アクセス 2020年10月9日。
(執筆:馬場 義久)