日々是総合政策No.281

医療・ヘルスツーリズムに掛かる期待     

 地方創生に取り組んでいる日本社会を新型コロナが襲う日々が続きました。ようやく下火になったようですが、パンデミック再来に備え、強靭かつ健康な社会づくりが切望されています。
 地域社会の基盤を構成しているのはコミュニティビジネスです。コミュニティビジネスは、中小企業、小規模事業、ベンチャービジネス、スターティング・アップ企業などの営利型と、公立病院など非営利型のソーシャルビジネスに分類されます。
 地域医療は後者の典型的な事例ですが、その核となっているのが、かかりつけ医、保健所、公立病院です。しかし、これらの機関はいずれも次々に感染するコロナ患者の対応に追われ続けました。特に人口が10万人未満の市町村に立地している公立病院の経営は苦難を伴いました(注1)。
 政府の資金が医業を継続させる効果を発揮しましたが、コロナ対策として投じられた補助金・助成金が今後とも継続する可能性は少ないと思われます。そこで、経費を切り詰めるだけでなく、医業を持続する収益の獲得がポイントになります。ソーシャルビジネスに限らずコミュニティビジネスは一般的に信用力が弱く、資金調達が厳しい状況に置かれています。
 それを克服する一案が、医療・ヘルスツーリズムを活用することと思われます。これが地域発グローバル化につながるようにも思われます。事実、日本の34カ所の医療機関がJCI(Joint Commission International)の認証を得ています(注2)。その中には公立病院である南砺市民病院も含まれていますが、まさしく、地域発グローバル化への道を開くように思われます。
 同様に、ヘルスツーリズムには、医療・介護関係者、公的保険外の運動・栄養・保健サービス事業者、異業種事業者が参入(注3)、コミュニティを活性化することになりそうです。2020年にヘルスツーリズム認証制度が立ち上がったことも追い風になりそうです。さらに、雇用と所得が増加する社会において、医療・ヘルスに対する市民・住民の共感が高まり、政府の補助金・助成金や官民ファンドだけでなく、NPO・NPOバンクやクラウドファンデイングを通じた市民ファンドがコミュニティ、地域を活性化していく循環に期待できるのではないでしょうか。                       

(注1)2019年度から2021年度にかけて病院数は857病院から849病院に減少、病床数は205,259床から201,893床に減少しています。総務省(2020)「公立病院の現状について」、https://www.soumu.go.jp/main_content/000742388.pdf(2023.3.14 アクセス)

(注2)JCIは、1994年に米国の病院評価機構から発展して設立された、医療の質と患者の安全性を国際的に審査する機関です。JCI認定医療機関(2018)、https://www.medical-tourrism_or.jp/jci_list/(2023.1.26アクセス)

(注3)3つの類型については、経済産業省(2019)「ヘルスケアサービス参入事例と事業化へのポイント」、https://meti.go.jp/policy/mono_info/service/ healthcare/ downloadfiles/bissinessmodel-pdf(2023.1.11 アクセス) を参照して下さい。

   (執筆:岸真清) 

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