行政事業レビューとEBPM(上)
国や地方自治体の行政サービスの評価がなされるとき、その背後にある政策の体系は、「政策」、「施策」、「事業」の3段階として捉えられます。例えば、政策として環境にやさしい社会の実現、施策として廃棄物の減量、事業としてリサイクルの推進というように、段階を経るごとに具体的なものになります。
国レベルに関しては、民主党政権下において、2009年から「事業仕分け」が開催され、行政機関外部の者により、各府省庁の事業が評価されました。その後、自民党政権下では、事業評価の取組にいろいろな変更が加えられ、「行政事業レビュー」というかたちで毎年度実施されています。
事業の評価にあたっては、評価対象事業が、必要とされかつ公共部門によって実施されることが妥当であることを明確にした上で、事業の実施における有効性、効率性、緊急性などの観点も考慮されます。さらに、そのような検討において、質的情報だけではなく、関連する定量的目標も適宜利用されてきました。しかし、近年、国が推進する「証拠に基づく政策立案(Evidence-based Policy Making, EBPM)」の取組の一つとして、行政事業レビューが位置づけられるようになり、行政事業レビューの実施においても改善が試みられています。
EBPMでは、政策決定の際、統計学の手法を用いて、政策実施を原因とし、政策効果を結果とする因果関係が示されることが必要とされて、両者の因果関係が示されることによって、政策が評価されます。EBPMの考え方に基づくと、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial, RCT)と呼ばれる手法が理想とされますが、行政事業レビューのように、各府省庁のすべての事業を評価対象とする取組においては、EBPMの要素を取り入れることにおいて、限界もあることは認識すべきだと思います。現状においては、すべての事業評価において、「ロジックモデル」が導入されています。ロジックモデルは、統計学の手法は用いられていませんが、政策実施から政策効果へ至るフロー図によって因果関係を明示し、あわせて事業の成果に関するデータも示すものです。
次回では、筆者の行政事業レビュー外部有識者委員の経験を踏まえて、いくつかの点についてコメントします。
(執筆:飯島大邦)