日々是総合政策No.128

民主主義のソーシャルデザイン:リスクとクライシスのマネジメント(2)

 もうひとつの言葉、「クライシスマネジメント(危機管理)」についても考えてみましょう。リスクマネジメントが損害が発生する前までの「予防」的な活動であるのに対し、クライシスマネジメントとは、損害が発生した後に行われる「発生した”損害(ダメージ)”をいかに拡大させないか、または、その影響を小さいものとするか」という活動であると言えます。
 例えば、企業が何らかの不祥事を起こしてしまったとします。起きてしまった不祥事は、タイムマシーンが無い限り、不祥事が起きる前に戻って、それを食い止めるということはできません。できることは、その不祥事によって生じる企業の損害(ダメージ)を最小化し、できるだけ早く、その損害(ダメージ)から回復することです。
 これは企業の不祥事に限らず、災害や感染症などによる「危機(クライシス)」に対しても同じことが言えます。クライシスマネジメントにおいて最も重要な活動は「コミュニケーション活動」です。災害や感染症などの「危機」においては、多くの根拠のないデマ(今風に言えば「フェイクニュース」でしょうか)が飛び交い、時に人々の間でパニックが生じます。パニックが増大していけば、その「危機」はさらに拡大し、それによる損害も大きくなり、または新たな「危機」が生じることさえあるかもしれません。
 このような「パニック」を避けるためには、人々が信頼たり得ると考える機関が、人々が冷静に行動することができる「正確な情報」を、適切な「タイミング」で提供することです。例えば、政府であっても「未確認情報」を無暗に提供してしまえば、それにより、混乱やパニックが起きることがあり得ます。
 さらに「コミュニケーション活動」に加え、適切な「意思決定活動」が行われることがクライシスマネジメントの条件となります。適切な「意思決定活動」とは、意思決定される内容それ自体だけではなく、意思決定の「ライン(系統)」が守られることが大切です。「危機時」だからといって、意思決定の「ライン」が崩れることは、組織の崩壊につながりますし、それにより、混乱が増幅する要因となり得ます。
 「船頭多くして船山に登る」ことにならないようにしなければなりません。

(執筆:矢尾板俊平)

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