日々是総合政策No.142

スウェーデンのコロナ禍対策(1)

 今回はコロナ感染の現状と、政府の感染抑制策を紹介します。なお、同国の人口は約1000万人、その国土面積は日本の1.2倍です(注1より)。

1.感染の現状
 下の表は感染者数の多い30カ国から一部を抽出したものです。スウェーデンの感染者数総計は世界で21番目、感染者に占める死者の割合は12.1%と世界6番目です。スウェーデン公衆衛生局によると4月28日現在、総死者数の87%が70歳以上の方です。

(出所)日本経済新聞2020年4月28日付より算出。数字は、米ジョンズ・ホプキンス大学による。4月27日現在。

 ちなみにノルウェー公衆衛生研究所によれば、4月27日現在ノルウェーは感染者数7605人、うち死亡者数は195人です。この点もあってか、スウェーデンの代表的な新聞であるDAGENS NYHETER(=今日のニュース) で「なぜわが国の死者が隣の国々より多いのか、その原因を明らかにすべき」(注4より)との意見が出されています。

2.感染拡大抑制策
 スウェーデン政府による抑制策は、他の欧米諸国と異なり規制のきわめて少ないものです。法的に規制されるのは、50人を超えるイベント(コンサートなど)の禁止だけです。Stefan Löfvent首相は「政府と我々の医療システムはできることすべてを行っている。しかし、国民全員が責任を果たすことが重要」(注5より)と訴えています。そして、具体的には以下の行動をとれば責任を果たせるとしています(注6より)。
①軽い風邪であっても自宅で過ごし、職場に行かない。
②高齢の親族への訪問を避ける。
③何度もお湯と石鹸で手を20秒間洗う。
④屋内・屋外とも人との距離を保つ
⑤グランド・プール・ジムで人との距離を保つ。
⑥ラッシュアワーを避けて移動する。
⑦旅行は絶対必要な場合に限る。

3.「お願い」ではなく国民の責任を強調する点、いかにも自律の国らしい。なお、スウェーデンには「ノーマルな状態のもとで、ある特定の活動について責任を負う人々は、危機の状況下でも当該活動について責任を負うべし」(注5より)というThe responsibility principleがある。

注 
以下、すべて最終アクセス 2020年4月29日。
1.日本外務省URL
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/sweden/data.html
2.スウェーデン公衆衛生局URL
https://fohm.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/68d4537bf2714e63b646c37f152f1392
3.ノルウェー公衆衛生研究所
https://www.fhi.no/en/id/infectious-diseases/coronavirus/daily-reports/daily-reports-COVID19/ 
4.DAGENS NYHETER URL
https://www.dn.se/debatt/fortsatt-fler-doda-i-sverige-an-i-vara-nordiska-grannlander/
5.スウェーデン政府URL
https://www.government.se/articles/2020/04/strategy-in-response-to-the-covid-19-pandemic/
6.スウェーデン政府緊急情報URL
https://www.krisinformation.se/en

 (執筆:馬場 義久)

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