日々是総合政策No.78

産業構造

 こんにちは、ふたたび池上です。第1-6回は、一人あたり国民所得、その成長と、国単位のお話でしたが、今回からは国の経済成長に伴い、国内の産業構造がどのように変化するのかという国単位ではなく産業単位のお話です。
 産業単位とはいっても、国内のあらゆる産業を農業、工業、サービス業という3種類に分類します。ほとんどの国は、経済成長に伴い、経済の中心が農業から工業、工業からサービス業に移ってきました。この現象をペティ=クラークの法則と呼びます。日本では、労働人口における(農業:工業:サービス業)の比率は、1920年は(54:21:24)でしたが、2005年には(5:26:67)となりました。国内総生産(GDP)における(農業:工業:サービス業)の比率は、1950年は(26:32:42)、1995年には(2:34:64)でした。
 また、経済発展の初期には、農業の労働生産性と非農業(工業・サービス業)の労働生産性の比率が小さく、経済発展につれてその比率が大きくなることもわかっています。途上国ではその比率が0.2以下ですが、中所得国、先進国はその比率がより大きく、0.5以上の国々もあります。
 これらの経済成長に伴い、労働力が農業から非農業へ、GDPの中心も農業から工業へ、農業と非農業の生産性格差が減少するという産業構造の変化(構造転換)を説明するモデルとしてルイス・モデルがあります。経済発展以前は、国内のすべての労働力は農業に従事し、所得は平等に分配されています。生産量を労働人口で割っているので、所得は平均生産性に等しくなります。工業が起きると、工業は労働者に農業の平均生産性より高い賃金をオファーし、労働者が農業から工業に移動し始めます。このときは、農業と工業の間に生産性格差があります。工業が発展するにつれ、農業人口、農業生産は縮小しますが、やがて農業も労働者を引き止めるために賃金を増加させるようになり、農業と工業との間で労働者を求める競争がはじまります。そのときには農業と工業の生産性格差は解消しています。
 このルイス・モデルでは、経済発展は工業が牽引します。農業は経済発展にとって重要ではないのでしょうか?次回はこのお話の予定です。

(執筆:池上宗信)