日々是総合政策No.81

民主主義のソーシャルデザイン:「共助」の仕組みと「小さな」デモクラシー

 「地震、雷、火事、親父」という言葉があります。この中で「親父」は、元々は「大山嵐(おおやまじ)」であったという説があります。(真偽のほどはわかりませんが)。ちなみに、「大山嵐」とは、台風や強風を意味します。このような災害に対し、「自分の身をどのように守るのか」ということを、日頃から意識し、考えておく必要があります。
 キーワードとなるのが「自助・共助・公助」という考え方です。「公助」とは、国や自治体の救難・救助活動、復旧・復興における支援などを想像するとわかりやすいかもしれません。一方、「自助」とは、自分や家族が、自分たちで何ができるのか、ということを考え、行動することと言えるでしょう。
 そして、「共助」とは、地域に住む人々がお互いに助け合いながら、何ができるのかということを考え、行動することと言えます。最近では、「近助」という「共助」で考えるよりも、もっと小さな近所関係において、お互いに、どのように助け合いが可能か、ということも議論されることもあります。こうした「共助」や「近助」の考え方を踏まえた地域での防災や減災、災害発生時の助け合い・支え合い仕組みづくりが、重要な課題になっています。
 その問題の背景には、自治会への加入率の減少や地域における防災活動を担う消防団の団員数の減少などがあります。総務省消防庁の統計によれば、平成以降、全国の消防団員数は100万人を下回り、減少傾向にあるとともに、近年では、その平均年齢も上昇しています。地域に住む人々の近所づきあいや地域への関わり方も変わりつつあります。日頃から顔見知りであり、付き合いを通じて信頼関係が生まれている場合と、そうではない場合とを比較すると、「共助」の仕組みは、前者では機能し、後者では機能しにくいと考えられます。
 まさに「ソーシャルキャピタル」が地域コミュニティの中で、どれだけ醸成されているかということが災害発生時における「共助」に大きな影響を与えると言っても過言ではないでしょう。
 しかし地域には、多様な価値観を持つ人々が住み、それぞれが感じる幸せも異なります。そこで、地域全体として、皆がどのようなコミュニティを形成し、どのように集合的な意思決定を行っていくかという「コミュニティ・マネジメント」が求められます。これが「小さな」民主主義の原点でもあると言えます。

(執筆:矢尾板俊平)