日々是総合政策No.82

政府間関係にとらわれない日韓関係の構築を(下)

 政府間関係の悪化が対韓感情に大きく影響する現象がある一方で、興味深い動きが出ている。それはツイッター上での「#好きです韓国」の広がりである。このハッシュタグは、政治家たちの発言が民間の交流にまで影響してほしくないとの思いで作られたという(注1)。韓国のツイッターユーザーがそれに応答する形で作った「#好きです日本」もある。「#好きです_韓国」では韓国旅行で好意的に声をかけくれたり、重たいスーツケースを持って階段を上ってくれたりなどの優しくしてもらった思い出や、韓国の食や音楽が好きなど、個々人の体験した日韓関係の投稿を多く目にする。彼らにとっての「韓国」は上述したような政府間のものではなく、親切にしてもらった「韓国」、身近な「韓国」である。そして彼らは、そのような「韓国」を大事にしたいと考えているのだ。
 この動きの大切さは、メディアが報道する「韓国」に対して、「体験した韓国」や「自分の知る韓国」を示していることである。どのくらいの人が実際に少女像を見に行ったのか、普段からGSOMIAを意識していたのか、または、近年韓国を訪れたのか。2018年における日本からの訪韓者数は約2,949,000人である(注2)。単純計算で日本の人口の約2.3%が訪韓したことになる。言い換えると、97.7%の人々はここ一年以内に韓国を訪れていない。にもかかわらず最近の韓国について良くないイメージが生まれる(注3)。日々の報道からイメージ上の韓国を作り上げてはいないだろうか。
 「#好きです_韓国」の投稿に見られるような個々人の体験した日韓関係は、政府間関係のそれとは大きく異なる。そこからは、従来の政府間関係によって作られるイメージではない韓国の側面を彼らが大切にしていることが伝わる。さらにこれらの投稿は、韓国を多様な存在にする。政府間関係にとらわれない日韓関係の構築が見られる。

(執筆:深田有子)

(注1)「『日韓関係を諦めたくない』両国のTwitterユーザーがハッシュタグに込めた思い」. https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/hashtag-japan-korea (2019年9月3日アクセス).
(注2)「【図解】日本人出国者数、韓国・台湾・香港への直近10年間をグラフで比較してみた(2018年版)」. https://www.travelvoice.jp/20190307-126690 (2019年9月3日アクセス).
(注3)2019年5月から6月にかけて行われた言論NPOと東アジア研究院の共同世論調査では、韓国に対して「良い印象」を持っているとの回答が20.0%で調査開始以降最低となった。「良くない印象」を持っているとの回答は49.9%である。また、現在の日韓関係を「悪い」と見る日本側の回答は63.5%で、昨年の40.6%から増加した。このように、日本側の韓国に対する良いイメージは低下したが、他方、韓国側の日本に対する良いイメージは向上した。日本に対して「良い印象」を持っているとの回答は31.7%で過去最高となったことは注目に値する。「第7回日韓共同世論調査 日韓世論比較結果」.http://www.genron-npo.net/world/archives/7250.html (2019年9月9日アクセス).