日々是総合政策No.110

リゾート開発の公共政策:ボラカイ島の場合(中)

 ボラカイ島は、フイリピンの主要な観光地の一つです(表-2)。国内にとどまらず海外からの観光客も多く、マニラ首都圏を除けば、3番目に人気の観光地になっています。トリップアドバイザーによる『世界のベストアイランドランキング2016』によれば、アジアでは、ボラカイ島は第7位と人気が高い(ちなみに日本の西表島は第10位です)。フイリピン全体では、ホテルなど宿泊施設は約9000施設、22万部屋ありますが、「ボラカイ島」ではそれぞれ271施設、7684部屋となっています(いずれも2014年)。一施設当たりの部屋数は全体では24室であるのに対して、セブでは33.5室、「ボラカイ島」では28.4室となっており、平均的に施設規模が大きく、いわゆるリゾートホテルなどが趨勢だと考えられます。実際、シャングリ・ラ・ホテルズ&リゾーツなど世界的なホテルチェーンをはじめ、多くのリゾートホテルが営業しています。
 リゾートで観光開発がもたらす環境への影響は、観光施設の急増による水質汚濁や廃棄物による海洋汚染、開発による自然環境破壊などが考えられます。実際、「大勢の観光客が押し寄せ、環境汚染や生態系への影響が深刻化して」います(読売新聞(2018/04/08))。これは、観光発展によって環境問題が置き去りにされる典型的な例です。その理由としては、環境保全に関するガバナンスが未整備、環境政策の遂行が不十分、環境保全に関する業者や住民の意識が低く環境保全への協力体制が未成熟、など多くの点が考えられます。「ボラカイ島」の場合、自然環境を保全しかつ持続可能な観光開発を図るために、上下水道や廃棄物処理施設の整備が必要とのことから、日本からフイリピン観光公社に対して円借款による協力事業として「ボラカイ島環境保全事業(1995-2010)」が実施されました。また、持続可能な観光開発の計画として、日本国際協力銀行(JBIC:Japan Bank for International Cooperation) が協力して作成された2007年の「持続可能な観光管理計画(以下「計画」)」などがあります。

表-2 フイリピンの主要観光地

(執筆:薮田雅弘)