日々是総合政策No.105

産業構造3

 こんにちは、ふたたび池上です。第7−8回は、経済発展に伴い経済の中心が農業から工業にシフトするルイス・モデルのお話でした。今回は、その拡張版とも言える、ハリス=トダロ・モデルのお話です。
 ルイス・モデルでは、農業と工業の2部門でしたが、ハリス=トダロ・モデルでは、農業、都市インフォーマル部門、都市フォーマル部門の3部門を仮定します。都市フォーマル部門は、都市における工業とサービス業の合計、かつ、毎月、月給をもらえる安定した部門だと考えてください。フォーマルは、フォーマル・スーツ(正装するときのカチッとしたスーツ)のフォーマルで、和訳は公式です。
 一方、インフォーマルの和訳は非公式です。都市インフォーマル部門は、都市における工業とサービス業の合計、かつ、月給ではなく、日雇いなどの不安定な部門です。途上国で頻繁に観察される、従業員の人数が、社長かつ従業員の一人だけ、もしくは社長と従業員の2人だけなどの零細自営業も、都市インフォーマル部門に含まれます。ルイス・モデルでは捨象されていたのですが、途上国で実際に存在する都市インフォーマル部門を取り入れたモデルが、ハリス=トダロ・モデルです。
 3部門それぞれの所得の大きさですが、大きい順から、都市フォーマル部門、農業、都市インフォーマル部門の所得とします。都市フォーマル部門の社長は、なぜ、事業を拡大するために、賃金を下げてより多くの労働者を雇わないのでしょうか?理由としては、現在の労働者の所得・栄養状態・健康・福利厚生を高めに設定・維持し、離職を防ぐ、やる気を高める、生産性を高めるなどが考えられています。
 経済発展につれて、人々は農業(農村)から都市に移動するのですが、次回は、その移動するかしないかという個々人の意思決定のお話の予定です。

(執筆:池上宗信)

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