日々是総合政策No.180

欧州グリーンディールと欧州復興計画

 新型コロナウイルス感染症は、前回(No.171)にも述べましたように、全世界の社会と経済に甚大な影響を及ぼし、人々に「新たな日常」への転換を求めています。欧州もコロナ危機の対応を余儀なくされています。このコロナ感染が大きな社会問題となった2020年の前年末、すなわち2019年12月に、欧州委員会は新たな成長戦略として、次に定義されるような「欧州グリーンディール」(The European Green Deal)を策定しました(注1)。


 欧州グリーンディールは、・・・EUを、2050年に温室効果ガスの純排出がなく経済成長が資源の使用から切り離された、近代的で資源効率の高い競争的な経済をもった公正で繁栄した社会に変革することを目的とした新たな成長戦略である。


 この新たな成長戦略策定後に生じたコロナ危機に対処するため、欧州委員会は2020年5月に、EU(European Union:欧州連合)の予算総額1.85兆ユーロの欧州復興計画(the recovery plan for Europe)を提案しています。欧州復興計画では、EUが立ち直り、コロナ危機による被害を修復し、次世代のためにより良い未来を準備するためにグリーンとデジタルの対になった移行を加速させることの重要性が示されました。そして、欧州グリーンディールを最大限に活用するには、次世代EUが競争力のある持続可能性を推進することが不可欠であり、復興への公共投資は、環境と気候変動に「害を及ぼさない」というグリーン宣誓を尊重する必要があるとされています。とりわけ欧州委員会は、気候変動対策をさらに強化するため、2021-27年のEU長期予算について総支出の少なくとも25%が同期間の気候変動対策に充てられることを提案していますので、復興への公共投資もこの点が配慮されることになります(注2)。
 さらに、コロナ危機によって、欧州でもデジタル化の重要性が一層高まり、社会生活や経済生活の永続的かつ構造的な変化(更なるテレワーク、eラーニング、eコマース、電子政府)がもたらされ、国境を越えたデジタル公共サービスへの簡単で信頼できる安全なアクセスを可能にする広く受容されるe-ID(公共電子ID)が開発されるようになる点も、指摘されています(注3)。

(注1)European Commission, “The European Green Deal,” (Brussels, 11.12.2019 [COM(2019) 640 final]) p. 2
https://eur-lex.europa.eu/resource.html?uri=cellar:b828d165-1c22-11ea-8c1f-01aa75ed71a1.0002.02/DOC_1&format=PDF なお、経済成長と資源利用との切り離しは、環境分野では「デカップリング」といわれています。この点についての簡単な説明は、
https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/201608.htmlを参照ください。
(注2)European Commission, “The EU Budget Powering the Recovery Plan for Europe,” (Brussels, 27.5.2020 [COM(2020) 442 final])
https://eur-lex.europa.eu/resource.html?uri=cellar:4524c01c-a0e6-11ea-9d2d-01aa75ed71a1.0003.02/DOC_1&format=PDF,
European Commission, “Europe’s Moment: Repair and Prepare for the Next Generation,” (
Brussels, 27.5.2020 [COM(2020) 456 final])
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52020DC0456&from=EN,
European Commission, “Supporting Climate Action through the EU Budget,”
https://ec.europa.eu/clima/policies/budget/mainstreaming_en を参照。
(注3)European Commission, “Europe’s Moment: Repair and Prepare for the Next Generation,” (Brussels, 27.5.2020 [COM(2020) 456 final]) p.8
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52020DC0456&from=EN を参照。

上記のリンク先URLすべて、最終アクセス2020年10月5日。

(執筆:横山彰)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA