日々是総合政策No.212

社会保険料の負担(3)

 社会保険料は支払者に社会保障給付を与えます。そこで今回は、日本が採用している賦課方式の年金制度が、保険料負担に見合った年金を給付できる条件について解説します。
 まず、保険料負担に見合った年金を定義します。
 それは、現役期(第1期)に納めた個人の保険料Hの元利合計が、当該個人の高齢期(第2期)に年金Gとして給付される場合です。この時、GとHの関係は
  G=H(1+r) (1)
 となります(注)。rは現役期間における貯蓄の利子率です。給付を考慮した保険料の純負担をα1とすると、
  α1=保険料負担-年金=H(1+r)-G=0 (2)
 が成立します。式(2)は第2期での値なので、保険料負担にHだけでなく利子分rHが含まれます。つまり、仮に第1期にHを市場で運用したら得られる利子を含めなければなりません。
次に、賦課方式を見ます。現役世代の人口をLY ,一人当り保険料をH、高齢世代の人口をLO、一人当り年金をGとし、かつ、LY=LO(1+n) とします。nは人口変化率(100n%)で小数です。
 賦課方式は、現役の保険料をその時点での高齢世代の年金に使用するので、
  LY×H=LO×G  
 が成立します。GとHとの関係は
  G=H×LY/LO=H×LO(1+n)/LO=H(1+n) (3)
 となります。いま、n>0とし、しかも各世代が同額のH0を支払うと仮定しましょう(H=H0)。この場合、高齢世代の年金総額は、一世代若い現役世代の人口×H0(=保険料総額)です。これを高齢世代の人口で割ったのがGです。n>0 の時、高齢世代の人口の方が少ないので、G>H0となります。
 さて(3)から、保険料の純負担α2は
  α2=H(1+r)-G=H(1+r)-H(1+n)=H(r-n) (4)
 となります。いま、高齢化をふまえnが低くn<rとします。この時、α2>0なので、保険料負担の一部が年金として戻ってきません。よってα2は「税」と同じです。しかも、それは低いnに直面する世代ほど多額になります。
 この「税」は、一期前の世代(高齢世代)が年金として得ています。つまり、「税」は、ある世代からその一期前の世代への所得移転に他なりません。
 賦課方式では年金がnによって決まるため、保険料負担に見合った年金給付の実現は困難になります。

(注)詳しくは麻生良文(1995)「公的年金と課税ベースの漏れ」『経済研究』Vol.46,No.4,313-322頁を参照。 

(執筆:馬場 義久)

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