日々是総合政策No.258

自然災害とその復興課題について(4)

 日本の災害復旧で重要な役割を担うのは地方自治体です。各地方自治体は独自の「地域防災計画」を作成しながら、自助・共助・公助に基づく防災や危機管理を試みています。新型コロナの感染拡大に伴い、国も様々な支援を施した結果、財政は非常に厳しい状況です。各地方自治体は独自の防災や危機管理による自助、さらには、発災時における機動力確保のための連携協定の締結による共助を中心に災害対策を行います。そのうえで、被災時には公的支援による公助により早期の災害復旧を試みることになります。
 水道事業でも日本水道協会の指導に基づき、様々な地域で幾つかの水道事業体が合同で防災訓練の実施を行うケースがあります。これまでの広域化と言えば、規模の経済や範囲の経済が具体的な例として挙げられるように、歳出の効率化を目指すための手段として考えられてきました。
 しかし、より最近では偶発的な災害に備えたリスクプールとして、広域化が注目されるようになっています。今後は各事業体、あるいは自治体間でのインフラの整備状況に関する情報共有が重要です。さらに、老朽化した施設の更新投資は減価償却費を増加させ、水道財政を圧迫します。老朽化した施設の把握、たとえば水道管路等の布設状況を各水道事業体は正確に把握しなければなりません。インフラの更新投資が滞る過疎地域を中心に、全国レベルでの様々な公共施設の管理や運営が喫緊の課題と言えるでしょう。
 都市部ではテロ対策等も含めて、新たな危機管理が求められるようになってきています。住宅密集地では大規模災害が予測されるだけに、各事業体や自治体は協調を通じて危機管理を行うと同時に、防災に必要な住民への注意喚起や呼びかけが重要となっております。
 水サービス供給の危機管理や防災を広域的に実施するために、各事業体は様々な協定を締結します。各事業体は県内や県外の他事業体だけでなく、応急復旧業者や外郭団体・OBとも協定を締結しているものもあります。しかし、日本水道協会編『水道統計(令和元年度)』に基づけば、全国1412水道事業体のうち293団体、約20.75%は協定を締結出来ていないままとなっています。発災時における人手不足を解消するためにも、円滑な協定の締結が今後の課題となるでしょう。

(執筆:田代昌孝)

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