日々是総合政策No.145

新型コロナと国の政策(3)

 米中貿易摩擦とも言うように、中国もアメリカと並んだ大国です。以前は中国も途上国と言われましたが、沿岸部における外資系の企業誘致が盛んとなり、最近ではアメリカを凌ぐような経済大国となりました。これは中国共産党における人事評価が経済成長率に基づいているためであると言えます(注1)。
 一党独裁のような国家は中央政府が全ての政治に関与し、全ての国民を守るような体制です。中国が共産主義を唱っている以上、本来ならば国民はあらゆる面で平等でなければなりません。都市と農村の様々な格差を是正するような政策が、中国では最も重要であります。
 ただ実際には、中国は国土面積が非常に広く、格差を是正すると言っても、その効果は限られています。分税制という財政調整制度を中心に、いわゆる貧しい地域への補助金政策が完全に機能せず、多くの農民工が充分な社会保障制度を受けられない状況となっています。
 その原因として、中国の農民工が都市労働者に比べて、質の低い社会保障制度に加入するしかない状況が挙げられます。中国における社会保障制度の特徴と言えば、戸籍管理制度に基づく運営です。一部のビジネスに成功した農民起業家を除けば、ほとんどの農民は都市戸籍への転換は実質的に不可能なものとなっています(注2)。戸籍管理制度に基づく社会保障制度を通じて、様々な格差が発生した結果、中国では新型コロナが蔓延したとも言えるでしょう。
 公的医療の充実を疎かにして経済成長を重視した結果、医療サービスを中心に格差が生じたという背景は、中国もアメリカと非常に良く似ています。質の低い医療サービスを受け続ける低所得者と、高い医療技術のサービスを受ける高所得者が共存する体制は、中国もアメリカも同じです。新型コロナの世界的な流行を通じて、今後は多くの国々で公的医療の重要性を認識することになるでしょう。

(注1)中国の人事評価と経済成長との関係は、田中直毅「世界を揺るがす中国資源多消費型経済の屈曲点」『ニッポンドットコム』経済・ビジネス2016.02.17、
https://www.nippon.com/ja/column/g00349/(最終アクセス2020年5月4日)を参照した。
(注2)中国の戸籍管理制度による社会保障の運営は柯 隆[2014]「中国の社会保障制度と格差に関する考察」『フィナンシャル・レビュー』第119号、172-175頁を参照した。

(執筆:田代昌孝)

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