12月14日開催 公開研究会 「多文化共生に関する公共・地域の取り組み」のお知らせ

総務省に「多文化共生の推進に関する研究会」が2005年6月に設置されてから、公共・地域の取り組みは14年以上が経過しました。2018年12月には外国人労働者受け入れのための新たな在留資格「特定技能」が創設され、あわせて「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定されるなど、日本における多文化共生をめぐる状況は大きな変化の中にあります。

本研究プロジェクトでは日本の多文化共生の現状や課題を考えるべく、下記の通り公開研究会を行います。皆様のご参加をお持ちいたします。

日 時:2019年12月14日(土) 13:00~15:30

場 所:中央大学多摩キャンパス 11号館4階 11410教室

プログラム

13:00~13:05 開会挨拶 

   横山彰(中央大学名誉教授、総合政策フォーラム代表理事)

13:05~13:40 報告1「日本の地域社会の多様化と多文化共生施策の展開について」

   平嶋彰英 (立教大学特任教授、元総務省自治行政局国際室長、 総合政策フォーラム顧問)

13:40~14:15 報告2「外国人材の受入れと地域における多文化共生の現状等」

   稲原浩(総務省自治行政局国際室長・参事官(国際担当))

14:15~14:50 報告3「一般財団法人自治体国際化協会 多文化共生部の取組について」

   上坊勝則(自治体国際化協会 事務局長)

14:50~15:00 休憩

15:00~15:30 質疑応答・全体討論

参加費:無料

参加申込こちらのフォームより、お申込みください(先着40名)

申込締切:2019年12月9日(月)PM 17:00

問い合わせ:上記申込フォームの自由記述欄にてお願いします。 *返信までお時間をいただく場合があります。予めご了承ください。

日々是総合政策No.103

相手の立場に立って考える(2)

 今から50年前のこと。生徒のほとんどが大学受験をする県立の進学校にいた私は、硬式野球部に所属していたせいか、受験勉強には熱がはいらなかった。否、野球部に入っていたことを言い訳に受験勉強を怠っていたといったほうが良いかもしれない。食べ物と同じく、科目に対しても好き嫌いの激しかった私の成績は、だいたい「中の上」だった(英数社は良かったが、国理は良くなかった)。
 当時の高校では、男子は制服制帽、丸刈りであった。他の高校では丸刈り廃止の動きはあったが、わが高校は県内で最も歴史があり、良くも悪くも保守的な学校であり、私は3年間を通じて丸刈りで通した。
 あるとき、また聞きで、ある進路指導の先生の指導の仕方を耳にした。その指導方法はこうだった。「君は大学名で大学を選ぶのか、それとも専門分野で大学を選ぶのか」を尋ね、「大学名」と答えた生徒には、その大学で一番偏差値の低い学部学科を受験せよと指導し、「専門分野」と答えた生徒には、偏差値が高くて合格可能性が低い大学でなく、偏差値がその大学よりもかなり低くて、合格可能性がほぼ100%の大学を受験せよと指導したという。
 ついでながら、受験指導の教員は、難易度の高い私立の早慶よりも、難易度の低い地方の国立大学の受験を優先し、指導する生徒のうち国立大学に何人入ったかを自慢していた。早慶やMARCHはすべての国立大学よりも劣る存在として蔑視されていた。何年か前に、別の県立高校を訪問した際にも、受験指導の教員が同じような指導を自慢していたことに驚かされた(その教員は地方の国立大学出身だった)。
 こうした指導は、相手の立場に立った有益な指導に見えるが、実際には自分の価値を相手に押し付けるものでしかなかった。県で最も古い県立高校で長年受験指導を行ってきた先生の強圧的な言葉で、その権威を振りかざしての発言だった。
私はこの指導方法を聞いて非常に腹が立った。受験指導の先生に腹が立ったのではなく、先生の話を黙って聞いて帰ってきた生徒に対して腹が立った。「アドバイスはうれしいが、自分の進路は自分で決める」となぜ答えなかったのか、と。今も私の考えは変わらない。

(執筆:谷口洋志)

日々是総合政策No.102

うそと真実

 あなたは「うそ」をついたことがありますか?
 小さい頃、外から帰って手を洗ってからおやつを食べるように言われて、洗ってないのに「洗ったよ。」と言ったことはないでしょうか?宿題をしていないのに、終わったことにして遊びに行ったことはないでしょうか?大体の人は何かしら「うそ」をついたことがあるのではないかと思います。
 では、なぜ人は「うそ」をつくのでしょうか?小さい頃の自分を守るうそとは違い、大人になるにつれ、うそに対する意識は変わってくるようです。学生に聞いたところ、うそをついてはいけないという意識はあるものの、「他人を傷つけない」ためにつくうそは、あったほうが良いと思っている人がほとんどでした。
 では、企業についてはどうでしょう?企業は、利害関係者を傷つけたくないという理由で、うそをつくことは認められるでしょうか?
 証券取引所に上場している法人は、企業の決算書である有価証券報告書に「うそ」の記載をすると、金融商品取引法上の有価証券報告書虚偽記載罪で、7億円以下の罰金が課されます。上場していてもいなくても、「うそ」をついた株式会社の取締役等は、会社法の特別背任罪に問われます。
 企業会計原則一般原則の最初に「真実性の原則」があります。「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。」と書かれています。この企業会計原則とは、「必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準」であるとその前文に謳われているのですが、企業のうそ、すなわち粉飾決算(window dressing)は枚挙に暇がありません。粉飾決算については、次回また考えてみたいと思います。

(執筆 渡部美紀子)

日々是総合政策No.101

ふるさと納税について思っていること

 平成26年度以降、ふるさと納税受入額は急増し、平成30年度には約5,127億円となりました。一方、過熱する返礼品問題も大きな問題として取り上げられています。
そのきっかけとなったのは、平成27年度税制改正における「ふるさと納税制度の特例控除額の倍増」と「ワンストップ特例」の導入と言われます。当時、筆者は総務省の自治税務局長、つまり、この制度の事務方の責任者でした。そうした立場から、ふるさと納税制度をめぐる様々なことについて、この場をお借りして、現時点でのコメントを申し上げたいと思います。それは、一言で言えば、「内心忸怩たる思い」という言葉に尽きます。
 ふるさと納税は、当時から高額納税者にはお得な(比較的富裕な方には利用しなければ損な)節税策としての認識が広がっていました。そうしたことも背景にしながら、地方自治体間の返礼品競争が過熱となることの萌芽が既に現れ始めていました。
当時の同僚や優秀な部下諸君とも、いろいろなことを調べ、何度も何度も議論を行い、その後に起こる過熱な返礼品競争もある程度予見し、懸念していました。しかし、事務方の責任者である私の自らの力不足により、関係者の十分な理解を得ることができず、結果として、皆が納得できるような有効な対応策を講じることができませんでした。
 ふるさと納税をめぐる返礼品問題の混乱は、それにより招いた事態であるという面があることは否定できない、という認識でおります。
 自治体関係者で大変な苦労をされた方や税務現場の職員等で不愉快な思いを感じられた方がおられるだろうと思います。
 ふるさと納税について、様々なことを耳にするたびに、この混乱がある程度予見できたにも関わらず十分な対応策を講じられなかったことについて、当時の事務方の責任者としての責任を感じており、忸怩たる思いをしております。
 現状については、現在の担当者がいろいろと苦労しているところと思います。当時、この問題の事務方の責任者の立場にありながら有効な対策を講じられなかった者にどの程度コメントをする資格があるのか、という思いもありますので、これ以上のコメントは差し控えたいと思います。

(執筆:平嶋彰英)

日々是総合政策No.100

日々是総合政策100回を記念して

 多くの方々のご支援により、今回で「日々是総合政策」も100回目を迎えることができました。ご執筆くださったフォーラム・メンバーと読者の皆様に、心よりお礼を申し上げます。
 このフォーラムの目的はWEBサイトに記載の通りですが、代表理事として期待していた副次効果の一つに、各メンバーに次世代の社会を担う中高生はじめ若い人々へ自分の伝えたいメッセージを発信していただくことがありました。
 このために、「日々是総合政策」では、総合政策の基本的な考え方や日々の暮らしの中で考えたことや各々の研究成果などを、メンバーに中高生にも分かるような形でエッセイを執筆していただいています。できるだけ中高生にも分かるように書くことは、執筆者自身が政策や日々の暮らしについて何をどのような言葉で伝えれば次世代に自分の考えを分かってもらえるのか、を考えるきっかけになります。
 また、「子の恩」といった効果もあるかもしれません。親(大人世代)は、子(子ども世代)がいて初めて親としての自覚をもち、子が正しいと考えることに反する行動を取りにくくなります。一人の時には横断歩道を渡らない大人でも、子どもと一緒の時には子どもを意識して横断歩道を渡るようになったり、子どもが節水や節電など環境配慮行動をしている姿をみた大人は自分もそうした行動を取るようになったりします。そこで、日々是総合政策のエッセイは、中高生にも分かるように執筆していただいています。
 私としては、執筆者の皆さんが日々是総合政策に掲載されたエッセイを英文にすることにより、日本社会だけなく地球規模でも次世代を担う中高生はじめ若い人々に、各々のメッセージを伝えていただきたいと考えています。
 さらに、これまでのエッセイをお読みくださった方々へのお願いですが、身近の若い人々にも読んで欲しいとお考えのエッセイがありましたら、是非とも一読するようにお勧めください。そうしたことを通して、読者の方々に結節点としての役割を果たしていただければ、この日々是総合政策の存在価値をさらに高めることができると思います。
 今後とも、「日々是総合政策」へのご支援を宜しくお願いいたします。

(執筆:横山彰)