日々是総合政策 No.10

中国は先進国か?

 10年近く前のこと、2010年に中国が日本を経済規模(GDP=国内総生産という指標によって測られる)で追い越し、世界第2位になったことが報じられた。多くの日本人は驚きながらも、あれだけ人口が大きいのだから全体規模では追いついても1人当たり平均ではまだまだ大きな差があると自らを慰めていた。今もこのように思っている人が多いとしたら問題だ。
 IMF(国際通貨基金)の最新統計(World Economic Outlook Database、2019年4月)によると、2000年段階で、中国の経済規模は日本の4分の1だった(1990年には日本の13%だった)。それが10年後には追いついたのだ。この勢いは若干弱まっても、現在も高速であることは間違いない。実際、2020年には中国の経済規模は日本の2.8倍となり、2023年には3倍を超えると予測されている。
 1人当たり平均の経済規模(米ドルで測った名目GDP)をみると、2000年に日本は中国の40倍だったが、2010年には10倍にまで縮小し、2020年には4倍弱にまで低下する。日本の1人当たり平均の名目GDPを約4万ドルとすればすでに中国は約1万ドルとなる(IMFの予測では、2019年の場合、日本は4万1021ドル、中国は1万153ドル)。
 前回見たように、1人当たり平均の経済規模1万2000ドル以上を高所得経済=先進国経済とすると、中国は先進国に近いところまで来ている。実際、IMFの予測では、2021年に約1万2000ドル、2024年には約1万5000ドルになるとされている。つまり、数年以内に、中国は先進国の経済水準に達するということだ。
 中国の勢いは経済だけにとどまらない。今や、理工系の先端技術分野では中国は米国と並ぶ「2強」となり、科学技術分野をリードしている。人工知能(AI)の研究開発水準でも「米中2強」であり、中国の自動車製造・販売は米国+日本の合計を上回り、世界の工場で働くロボットの約3割は中国国内で稼働している。2019年3月末の移動電話ユーザー数は16億(15億9655万)で、日本(2018年12月末、1億7261万)の10倍近い。(それぞれの数値は、OICA=国際自動車工業連合会、IFR=国際ロボット連盟、中国工業情報化部、一般社団法人電気通信事業者協会、が公表する統計資料に基づく。)
 中国に対する我々のイメージと理解は大幅に修正される必要がある。

(執筆:谷口洋志)

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